特許行政年次報告書2018年度版
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中小企業・ベンチャー企業・地域・大学等への支援・施策第6章Column 27 特許行政年次報告書2018年版224知財ビジネス評価書を活用した中小企業への融資事例中小企業の有する特許等の知的財産を評価し、金融機関からの融資につなげることで、中小企業の知的財産への関心が高まり、知財活動の裾野を拡大することにつながる。近年、担保・保証に依存する融資姿勢を改め、取引先企業の事業の内容や成長可能性等を適切に評価(事業性評価)し、融資や本業支援等を通じて、地域産業・企業の生産性向上や円滑な新陳代謝を促進し、地方創生に貢献していくことが金融機関に期待されていることを背景に、「知財ビジネス評価書(特許等の知的財産を活用したビジネスを第三者の調査会社等が評価したもの。)」の活用が注目を浴びつつある。評価書は、技術・製品・サービスの評価だけではなく、企業の将来性や経営力を含む総合的な中小企業の評価を示すものであり、中小企業と金融機関の相互理解を進めるツールにもなっている。そして、評価結果を金融機関に提供し、融資判断の際に事業内容や成長可能性等が適切に評価されることで、中小企業に対する融資促進につながる。これまでにも、公益財団法人ひょうご産業活性化センターをはじめとする一部の公的機関や、豊和銀行や千葉銀行をはじめとする一部の民間金融機関で、評価書を活用して融資につなげようとする先駆的な動きがあった。同様の取組は、広島県、福岡県にも拡大する等他の自治体にも波及し、また、最近では、知財ビジネス評価書を活用又は独自で知財評価会社と業務提携して知財評価制度を創設する動きが民間金融機関でも多く見られるようになっている。このような取組を全国へ展開するため、特許庁でも、2014 年度に試行的に「知財ビジネス評価書作成支援」に取り組み始め、2015年度から本格的に実施している。2017年度、知財ビジネス評価書を融資判断材料の1つとして活用して融資につながった事例を紹介する。<金融機関の融資先公表事例>〇名古屋銀行(愛知県名古屋市)2017年12月、知財ビジネス評価書(平成29年度知財金融促進事業)を活用して融資を実行。行内における第4号案件。・廃タイヤのリサイクル業者に対し、廃タイヤをより汎用性の高い固形燃料にリサイクルする技術に着目し、事業拡大において高いポテンシャルを保有すると将来性の見極めに活用。 〇青森銀行(青森県青森市)2018年1月、知財ビジネス評価書(平成29年度知財金融促進事業)を活用して設備資金に対する融資を実行。・アスベスト除去事業者に対し、超高水圧による無人アスベスト除去技術に強みを持つことに着目し、事業の深堀を徹底し設備資金の提案を実現。 〇北洋銀行(北海道札幌市)2018年2月、知財ビジネス評価書(平成29年度知財金融促進事業)を活用して融資を実行。・健康食品・化粧品の企画製造業に対し、サケの軟骨から育毛促進に効果のある物質を抽出する特許に着目し、技術力や将来性の裏付けに評価書を活用。 〇岩手銀行(岩手県盛岡市)2017年6月、知財ビジネス評価書(企業が自己調達)を活用して融資を実行。・金属表面処理業者が保有する、金属と樹脂を接合する特許技術に着目し、事業性理解を深め、強みや将来の成長性を見極めるのに活用。

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