特許行政年次報告書2018年度版
264/372

人材育成に向けた支援・施策第7章特許行政年次報告書2018年版238マッチング、アドバイザーによるメンタリング等を行い、支援企業の事業の立ち上げをサポートし、これまでの6年間で58企業を支援し、有望なベンチャー企業48社に対して投資している。■ベンチャー企業の成長を支援することを第一に考え、支援の段階ではベンチャー企業が他社と協業する可能性を残すために特許権を譲り受けることはせず、支援企業の成長を阻害しない方針を採っている。また、ベンチャー企業の知財活動(権利化やリスクマネジメント)を積極的に支援するため、同社の知財室メンバーが、ベンチャー企業の発明発掘・特許侵害調査・出願支援・知財関連規程類の整備等を行っている。【知財活用ベンチャー】マイクロ波化学株式会社(大阪府)■社長を委員長にして各部門長や知財担当者などから構成される委員会を毎月開催している。同委員会では、権利内容・出願国の選択・秘匿化・他社特許への対策などについて、戦略的な事業展開を図るために顧問弁護士や弁理士の意見も活用しつつ、経営戦略の観点から判断している。限られた予算の中で効果的な権利活用に繋げるため、権利範囲が広く優位性を確保した特許となるように、将来の権利行使も考慮して特許出願を行っている。■マイクロ波プロセスの優位性を保つため、原材料を反応し易くする独自開発の触媒や周波数・温度などマイクロ波を最も効率的に反応させるレシピはノウハウとして管理して、マイクロ波を利用した反応装置を特許出願して権利化するオープン&クローズ戦略を徹底している。■権利化により参入障壁を高くしすぎることで黎明期にある技術の普及が遅れて市場が拡大しない状況に陥ることを防ぐため、食品・化学品・医薬品等の様々な分野の企業と合弁事業やライセンス事業を展開して、オープンイノベーションを実践している。【知財活用企業(商標)】株式会社トンボ鉛筆(東京都)■専門部署として知財部門を設け、知的財産管理規程等の社内規定を整備し、知的財産権の取得・管理の他、知財戦略の立案、模倣品対応やライセンス対応などの業務を実施している。ブランドを保護するために国内で270件以上の登録商標を保有している。■海外における知的財産権の取得・管理は国内の本社知財部門で一元管理しており、海外での模倣品に対しても現地法人の意見を聞きながら、本社主導で現地代理人と相談して対応している。■全世界の全商品に統一して使用するコーポレートブランドと、商品コンセプトやユーザー層に合わせた商品群ブランド・個別ブランドとを併用する複合ブランド戦略によりブランド展開を行っている。長年の使用により需要者の信用が醸成された商標を多数保有し、ブランドの提供価値と一貫したデザイン戦略に沿った製品開発を重ね、ブランドの拡大を図りながら戦略的な商品展開やプロモーションを実施している。また、色彩のみからなる商標の第1号として商標権を取得している。【知財活用企業(オープンイノベーション推進企業)】KDDI株式会社(東京都)■事業戦略と連携した知財戦略を実行する組織として知財戦略グループを設置。通信・金融・IoT等のサービスやプラットフォームは差別化し、ネットワークやデバイスは標準化することによるオープン&クローズ戦略により、顧客へ提供するサービスを中心とした特許出願を行っている。■ビジネスの創出・拡大のため、ベンチャー企業育成プログラム「KDDI∞Labo」を通じて、異業種のパートナー企業と連携したオープンイノベーションを積極的に推進している。パートナー企業とともにビジネス

元のページ  ../index.html#264

このブックを見る