特許行政年次報告書2018年度版
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特許行政年次報告書2018年版249第1章第2章第3部・国際的な動向と特許庁の取組(1)我が国との関係特許の分野では、日本国特許庁(JPO)とUSPTOとの間で、特許審査ハイウェイ、国際審査官協議等を通して緊密な協力関係を築いている。さらに、JPOとUSPTOは、(i)2015年7月1日から、米国が受理したPCT国際出願の一部について、国際調査・国際予備審査を我が国が実施(我が国による国際調査・国際予備審査の「管轄国」を米国に拡大)し、(ⅱ)2015年8月1日から日米協働調査試行プログラム1を開始している。また、日米欧三極特許庁会合、日米欧中韓五大特許庁会合といった多国間の枠組みにおいても、制度調和を始めとする種々の分野において連携を取っている。意匠の分野では、JPOとUSPTOは、共に実体審査国として、日米欧中韓の意匠五庁(ID5)会合や意匠分類専門家会合等を通じて、両庁の審査実務や意匠分類等に関する理解を深め、緊密な協力関係を築いている。2017年11月には、JPOは、USPTOと意匠分野における 両庁間の協力関係強化に関する部長級会合を実施した。同会合では、確実かつ円滑な意匠保護の実現に向けて、日米意匠審査会合(定期会合)の設置、日米共通分類の議論の加速化、意匠五庁(ID5)会合における両庁の協米国における動向2米国では、Donald Trump(ドナルド・トランプ)氏が2017年1月に第45代アメリカ合衆国大統領に就任した。トランプ政権は、中国が、知的財産・イノベーション・技術に関する法律・政策等を通じて、中国の企業に米国の技術や知的財産を移転することを促進・要求しており、米国の経済利益に悪影響を与えていると主張し、中国製品に対する関税引き上げ等を検討している。今後のトランプ政権による中国に対する措置が注目されている。また、政権交代に伴い、2017年6月にMichelle K. Lee氏が米国特許商標庁(USPTO)長官を辞任し、2018年2月、Andrei Iancu氏が新長官に就任した。Iancu長官の下、USPTOがどのように運営されていくかが注目される。本節では、我が国との関係に加え、米国における知的財産政策の動向及びUSPTOの各種取組について紹介する。力関係の深化、日米や他国の知財庁における意匠審査の迅速化及び品質と信頼性の更なる向上のためのツールや手続の検討着手等、意匠の実体審査実務を中心とする両庁間の相互理解と協力関係の強化を、今後進めていくことを確認した。商標の分野では、2001年から推進してきた日米欧の三極協力を発展させ、2011年から日米欧中韓の商標五庁(TM5)の枠組みによる協力を実施している。(2)近年の知的財産政策の動向①中国の不公正貿易に対する行政措置の検討2017年8月、トランプ大統領は、中国の知的財産権侵害等に関する大統領覚書(Presidential Memorandum2)に署名した。この覚書は、中国が、知的財産・イノベーション・技術に関する法律・政策等を通じて、中国の企業に米国の技術や知的財産を移転することを促進・要求しており、米国の経済利益に悪影響を与えている等とした上で、米国通商代表(USTR: Office of the United States Trade Representative)に対し、中国に関する調査を行うか否かを決定するよう指示したものである。1 https://www.jpo.go.jp/seido/tokkyo/tetuzuki/shinsa/zenpan/nichibei.htm2 https://www.whitehouse.gov/the-press-office/2017/08/14/presidential-memorandum-united-states-trade-representative21
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