特許行政年次報告書2018年度版
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国際的な知的財産制度の動向第1章特許行政年次報告書2018年版250WTOにおける紛争解決手続を求めることを指示し、(3)財務長官に対し、米国にとって重要な産業・技術に対する中国による投資に関する問題に対処するよう指示した2。今後のトランプ政権による中国に対する行政措置の行方が注目される。②スペシャル301条3報告書USTRは、2017年4月に「2017年スペシャル301条報告書」(以下レポート)を公表した4。レポートは1974年米国通商法182条に基づき、知的財産権保護が不十分な国や公正かつ公平な市場アクセスを認めない国を特定するもので、警戒レベルには高い順に「優先国」、「優先監視国」、「監視国」の3段階があり、「優先国」に特定されると調査及び相手国との協議が開始され、協議不調の場合には対抗措置(制裁)への手続が進められる。レポートにおいて、我が国は、米国と一緒に多国間での取組を行った国として、また、USPTOとパートナーシップを有する国として言及されている。(3)USPTOの取組①Iancu新長官の就任2017年1月の政権交代に伴い、6月にLee氏がUSPTO長官を辞任すると、長官職は空席となり、その間はJoseph Matal氏がUPSTOのこれを受け、USTRは、中国の技術移転、知的財産、イノベーションに関する法律・政策・慣行について通商法第301条に基づく調査1を実施し、次のような結論を出した。(1)中国は、米国企業から中国企業への技術移転を進めるために、合弁事業要件、株式制限、投資制限を含む外国による所有制限策を講じている。(2)中国は、米国企業の投資活動や事業活動に対し、技術ライセンスに関する制限を含む実質的な制限を課している。(3)中国は、米国企業に対する組織的投資・買収を指示・促進し、中国企業に最先端技術と知的財産を取得させている。(4)中国は、米国企業のコンピューターネットワークへの不正侵入を通じた窃盗を実施・援助している。また、知的財産保護の問題に関する利害関係者による意見として、商標の不正使用や、国有企業による特許侵害、知的財産に関する不完全な執行メカニズムへの懸念等について言及されている。本調査結果を踏まえ、2018年3月、トランプ大統領は中国の不公正な貿易慣行に対処するための行政措置として、(1)USTRに対し、中国製品に対する関税引き上げ案を検討することを指示し、(2)USTRに対し、中国の差別的な技術ライセンス慣行に対処するために、1 https://ustr.gov/sites/default/files/Section%20301%20FINAL.PDF2 https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/presidential -memorandum-actions-united-states-related-section-301-investigation/3 1974年通商法301条(貿易相手国の不公正な慣行に対して当該国との協議や制裁について定めた条項)の知的財産権についての特別版であるところから、スペシャル301条と呼ばれる。4 https://ustr.gov/sites/default/files/301/2017%20Special%20301%20Report%20FINAL.PDF2413-1-6図 スペシャル301条レポート指定国(2017年)優先国優先監視国監視国306条監視国—アルジェリア、アルゼンチン、チリ、中国、インド、インドネシア、クウェート、ロシア、タイ、ウクライナ、ベネズエラ(11か国)バルバドス、ボリビア、ブラジル、ブルガリア、カナダ、コロンビア、コスタリカ、ドミニカ共和国、エクアドル、エジプト、ギリシャ、グアテマラ、ジャマイカ、レバノン、メキシコ、パキスタン、ペルー、ルーマニア、スイス、トルコ、トルクメニスタン、ウズベキスタン、ベトナム(23か国)中国

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