特許行政年次報告書2018年度版
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特許行政年次報告書2018年版251第1章第2章第3部・国際的な動向と特許庁の取組ビュー(IPR: Inter Partes Review)、特許付与後レビュー(PGR: Post Grant Review)、ビジネス方法レビュー(CBMR: Covered Business Method Review)がある。請願が受理されると、所定の条件を満たすもののみが審理段階に入る。PTABへの請願件数が特に多いIPRについてみると、2017年3月までにPTABが受理した請願(4,563件)のうち、審理が開始されたものは約53%(2,406件)であり、また、最終審理結果が出た審理(1,577件)のうち、一部又は全ての請求項が無効と判断されたものは約81%(1,277件)であった2。なお、PTABに関連する最近の主な訴訟として、以下のものがある。・Oil States事件:PTABのAIAレビュー手続の合憲性が争われた事件。Oil States社は、「特許は行政機関で無効と判断されうる公権(public rights)でなく私有財産権(private property rights)であるため、憲法第3条(Article Ⅲ)に基づく連邦裁判所のみで無効と判断されうる」と主張した上で、「特許は公権であるためIPR手続を含むAIAレビュー手続は合憲である」としたCAFCの従前の判決を覆すよう求め、最高裁へ上告した。2018年4月、最高裁は、特許は公権であるとしてIPRは合憲との判断を下した。・Aqua事件:PTABのIPR手続中の補正申立についての立証責任に関する事件。2017年10月、CAFC大法廷は、IPR継続中に行った補正による補正後クレームの特許性についての立証責任をIPRの請求人に課すとする判断を下した。これまでPTABでは、従前のCAFC判決に従い、補正後クレームの特許性の立証責任を特許権者側に課していたが、本判決はこれを覆すものである。PTABは、本判決を受けて、2017年11月に補正をどのように扱うかについての確実性と透明性を確保する指揮を執っていた。ホワイトハウスは8月に長官候補としてIancu氏を指名すると発表し、上院での公聴会及び承認手続を経て、2018年2月、Iancu氏がUSPTO長官に就任した。Iancu氏は、Hughes Aircraft社にてエンジニアとして勤務後、UCLA法科大学院で法務博士の学位を取得し、知的財産分野の訴訟弁護士として活動した人物である。Iancu長官は、就任前の2017年12月に上院司法委員会メンバーとの書面による質疑応答1において、当事者系レビュー(IPR : Inter Partes Review)について「IPR制度を成功的に運用するためには、適切なバランスをとることが必要不可欠だと信じている」、「長官に承認されたら、(中略)IPRの制度目的が確実に達成されるようにしたい。目を向けるべき改善ポイントとしては、補正手続の問題、クレーム解釈の基準に関する問題、IPR手続開始の決定プロセスに関する問題、口頭審理の実施などが挙げられる」との見解を示している。また、特許適格性の問題について「米国特許法第101条に基づく特許適格性についての最近の最高裁判決は、この分野における一定程度の不確実性をもたらした」、「USPTOは、第101条に関する判例法の発展に従って、明確で一貫した手続を確保するよう努力する」と述べている。Iancu長官率いるUSPTOがこれらの課題にどのように取り組むのか、今後の動きが注目される。②PTABをめぐる動向2011年に成立した米国発明法(AIA)によって、USPTOが付与する特許の品質向上を目的として、特許付与後のレビューが導入されるとともに、レビューを所掌する組織として特許審判部(PTAB: Patent Trial and Appeal Board)が設立された。PTABが受理する請願には、当事者系レ1 https://www.judiciary.senate.gov/imo/media/doc/Iancu%20Responses%20to%20QFRs.pdf2 https://www.uspto.gov/sites/default/files/documents/AIA%20Statistics_March2017.pdf12

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