特許行政年次報告書2018年度版
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国際的な知的財産制度の動向第1章特許行政年次報告書2018年版254(1)我が国との関係我が国と欧州は、EU、EPO、EUIPO、各国知的財産庁を通じて様々な関わりを持っている。特許の分野においては、日本国特許庁(JPO)とEPOの間で、日米欧三極協力、日米欧中韓五大特許庁協力を通して交流を図っている。意匠分野においては、日欧意匠専門家会合や日米欧中韓の意匠五庁(ID5)会合を通じて、EUIPOと協力を行っている。商標の分野においては、日米欧中韓の商標五庁(TM5)会合を通して意見交換を行っている。その他、JPOと欧州各国の知的財産庁の間においても、政策、人材交流等を通じて積極的に関わりを持っている。2013年から交渉が開始された日・EU間の経済連携協定(EPA)に関しては、2017年12月に交渉妥結に至った。当該EPAを通じて我が国と欧州の関係がより深まることが期待されている。(2)近年の知的財産政策の動向①欧州特許制度改革の動き現在、欧州の複数の国において特許を取得する場合には、各国の知的財産庁に対してそれぞれ直接出願を行うほかに、欧州特許条約(EPC)に基づく出願を行うことが可能であり、EPOにおいて出願及び審査を一元的に行うことができる。しかし、EPCに基づく出願を行う欧州における動向3欧州では近年、欧州特許制度改革の動きが活発であり、単一効特許制度と統一特許訴訟制度の導入に向けて前進している一方、英国の欧州連合(EU)離脱問題(いわゆるBrexit)との関係で、本制度の施行について不透明性が生じている。また、欧州では、欧州特許庁が中核として大きな役割を担っており、様々な取組の下、欧州特許庁が開発するサーチや分類のシステムは欧州外へも広がりを見せている。その一方で、欧州各国特許庁も欧州特許庁と協調し、また、差別化を図りながら、様々な取組を行っている。本節では、我が国との関係に加え、欧州における近年の知的財産政策の動向、及び欧州連合(EU)、欧州特許庁(EPO)、欧州連合知的財産庁(EUIPO)、各国知的財産庁の各種取組について紹介する。際は、英語、ドイツ語、フランス語を手続言語とするものの、各国で特許権を有効なものとするためには、EPOにおいて特許査定がなされた後に、原則として、特許請求の範囲と明細書を各国の言語に翻訳する必要がある。また、各国の権利は独立しているため、特許権を行使する際には、各国で訴訟を提起する必要がある。これら出願人に課される翻訳費用や訴訟費用の負担を軽減すべく、欧州委員会のイニシアチブの下、2012年12月、欧州議会及びEU理事会は統一的な効力を有する欧州単一効特許(以下、「単一特許」)を創設するため規則を採択、また、2013年2月には、特許権成立後の侵害や有効性についての訴訟手続を一元的なものとする統一特許裁判所を創設する協定がEU各国の署名により成立した。単一特許の制度においては、既存の欧州特許と同様に、EPOで出願から審査までの手続を経た後、2017年3月末時点で参加を表明していないスペイン、クロアチアを除く26のEU加盟国の間で単一的な効力が与えられる。また、新たに創設される統一特許裁判所は、批准した協定締約国において、単一特許のみならず、欧州特許についても専属管轄を有することとされている。単一特許規則については、統一特許裁判所協定と同時に適用が開始されることになっており、そして、統一特許裁判所協定の発効には、英独仏を含む13か国以上による批准、及び、ブリュッセルI規則11 EU加盟国間における国際裁判管轄ルールを定め、判決の承認と執行に関する手続の統一及び簡素化を図るための規則。
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