特許行政年次報告書2018年度版
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国際的な知的財産制度の動向第1章特許行政年次報告書2018年版258表した。商標及び意匠に関しては、政府として、今後様々なオプションを追求し、最善の方法についてユーザーと協議していくこと、EU離脱後であっても英国産業界は欧州連合商標及び共同体意匠の登録を行うことは可能であることが示された。商標に関しては、英国は既にマドリッド制度のメンバーであり、一方、意匠に関しては、ハーグ協定加入のための批准書が2018年6月に発効する予定である。また、英国の非登録意匠権及び著作権を通じた非登録意匠の保護は引き続き存続予定であることが示された。特許に関して、当該国民投票の結果は、欧州特許庁に特許保護を求める上で影響を与えるものではなく、また英国を含む現存する欧州特許についても影響を受けることはない旨示された。また、英国のEU離脱は、欧州特許条約(EPC)における現行の欧州特許制度に影響を与えないこと、統一特許裁判所に係る議論に関しても当面変更はなく、引き続きこれに係る会合への参加を継続していくことが示された。②ドイツドイツは、地理的な位置ばかりでなく、国の規模や国力の面でも欧州の中心的な存在である。製造業も盛んであり、特許出願や特許訴訟も他の欧州の国に比べて多く、税関等も模倣品の取締りに積極的であると言われている。また、ミュンヘンには、EPOや世界的に有名なマックス・プランク知的財産・競争法研究所がある。ドイツの知的財産制度については、連邦司法省の下にドイツ特許商標庁が設けられ、そこがドイツ国内の特許、実用新案、商標及び意匠の審査・登録や、従業者発明の報償の調停等の中核を担っている。③フランスフランス経済・財政・産業省の所管庁の下にフランス産業財産権庁(INPI:Institut national de la propriété industrielle)が設置されており、特許制度、意匠制度、商標EUIPOへの改称や、共同体商標の名称の欧州連合商標(EUTM)への改称、EUTMに係る料金の変更等といった変更がなされた。②ストラテジックプラン2020欧州知的財産庁(EUIPO)は、2016年6月1日、2020年までの同庁の活動指針を定める「戦略計画2020(Strategic Plan 2020)」を公表した。戦略計画2020は、「ビジョン」を頂点に掲げ、それから生じる「戦略的目的(Strategic Goals)」及びさらにそれらを細分化した「行動方針(Lines of Action)」といった階層構成である。「行動方針」においては、職員の能力開発や実務環境の最適化、EUIPOにおける財政管理の強化、ITセキュリティの強化、IPツールやデータベースの開発・改善、EU各庁間のネットワークの強化、規則改正に対する各加盟国へのサポート、知財分野における証拠ベースの調査研究の実施、欧州企業に対する知財権の保護に係る支援等、多岐に渡って言及されている。(5)欧州各国の取組①英国ビジネス・イノベーション・職業技能省の下に、英国知的財産庁(UKIPO)が設置されている。同省が、特許、商標、意匠、及び著作権を所管しており、イノベーション促進の観点から知的財産権に関する責任を担っている。UKIPOは、PPHについても早くから取り組むなど、国際的な取組も活発であり、現在、日本、米国、韓国、カナダとPPHを実施している。また、オーストラリア、カナダの特許庁とバンクーバーグループを構成し、同グループ内での特許審査ワークシェアリングの促進、そのためのITシステムの整備等の協力を実施している。2016年6月23日の英国における欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票の結果、EU離脱を是とする投票が過半数を占めた。これを受けて、2016年8月2日に、英国知的財産庁(UKIPO)は、知財法制に関する見解を公

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