特許行政年次報告書2018年度版
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国際的な知的財産制度の動向第1章Column 31 特許行政年次報告書2018年版260BREXITと知的財産日本貿易振興機構 デュッセルドルフ事務所2019年3月30日0時0分(CET中央ヨーロッパ時間)、英国でEU法が適用されなくなる。今後の状況次第とはいえ間近に迫っている現実である。ここ数年の欧州における最も大きなニュースは、英国のEU離脱(BREXIT)問題といえるのではないだろうか。この歴史的な出来事は、知的財産制度にも大きな影響を及ぼすことが予想される。40年ほど議論されてきた欧州単一特許・統一特許裁判所制度の開始は2018年4月の英国の批准を受けドイツの批准を残すのみとなったが、BREXIT後の同制度における英国の立場は不透明である。しかし、将来的な制度である欧州単一特許・統一特許裁判所制度以上に、既にEUの制度として運用されている欧州連合商標・共同体意匠への影響は深刻である。2017年12月1日、欧州委員会は、EUと英国の間の離脱協定次第としつつも、EU離脱日前に登録された欧州連合商標•共同体意匠等は、離脱日以降、英国において効力を有しなくなることなどを明らかにした。突然知的財産を失うことになればビジネス上の大問題である。離脱協定案では、英国内の措置によって引き続き効力を保持するべきとの条項が盛り込まれているが、今後の交渉の行方が注目される。弊所知的財産部では、引き続き欧州知的財産動向を注視し、適時の情報発信に努めていきたい。

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