特許行政年次報告書2018年度版
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特許行政年次報告書2018年版261第1章第2章第3部・国際的な動向と特許庁の取組(1)我が国との関係①我が国とSIPOの取組日本国特許庁(JPO)とSIPOは、二国間及び多国間での枠組みを利用し、制度・審査実務、意匠、機械化、人材育成、審判等、幅広い分野で協力を推進している。2009年12月にはJPOとSIPOの間で、特許権・実用新案権・意匠権に関する協力を強化するための覚書(特許庁間協力覚書)を締結し、2009年9月には、独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)と国家知識産権局中国知識産権トレーニングセンターとの間で、知的財産人材の育成に関する協力覚書(人材育成協力覚書)を締結した。JPOとSIPOは、2017年11月に開催した第24回日中特許庁長官会合において、日中法制度・運用意見交換会について、ユーザーとの交流強化を含む協力拡充に合意したほか、人工知能(AI)の業務適用に関する日中の取組について情報共有を行うことに合意した。この他、特許、意匠、機械化、審判、人材育成等、多方面にわたる協力について議論を行った。中国における動向4中国は、今や世界で最も多く専利(我が国における「特許・実用新案・意匠」に相当)及び商標の出願を受理する国となった。これは、急速な経済発展に伴って、経済活動に必須である知的財産権の確保が一層重要となっていることを表しているといえよう。特に、2008年に中国国務院より公布された「国家知的財産権戦略綱要」で定められた目標を達成するため、各省庁や地方等、様々なレベルで各種の計画を策定し、産業財産権の取得奨励をはじめとする知的財産権に対する認識が浸透してきたこと、製造拠点から巨大市場として中国の位置付けが変化する中で、多国籍企業と現地企業の合弁によるR&Dの現地化が進展していること等を背景として、国内出願人による権利取得の活発化が目立っている。このような状況下では、輸出入共に中国を主要貿易相手国とする我が国にとっても、中国における知的財産権保護の重要性は高まる一方である。本節では、我が国との関係に加え、中国における近年の知的財産政策の動向、及び専利を所管する中国国家知識産権局(SIPO1)、商標を所管する中国国家工商行政管理総局(SAIC2)の各取組について紹介する3。②我が国とSAICの取組a. 二国間での協力JPOとSAICは、二国間及び多国間での枠組みを利用し、制度・審査実務、人材育成等、幅広い分野で協力を推進している。2009年8月には経済産業省とSAICの間で、大臣レベルで「知的財産保護の協力に関する覚書」を交換し、当該覚書に基づき策定された年間作業計画に沿って「日中商標審査担当官交流」を実施する等、商標の登録、審査等の分野における協力を進めてきた。JPOとSAICは、2017年11月にハイレベル会談を実施し、両国における審査処理促進に関する取組、商標制度に関する動向、今後の両国のハイレベル及び実務レベルでの交流等について意見交換を行った。また、2017年11月にスペイン・アリカンテで開催されたTM5年次会合の機会を利用して意見交換を実施し、審査処理促進等、双方の関心事項に基づく事務レベルの交流実施ついて議論を行った。さらに、2018年1月には、SAIC一行がJPOを訪問し、商標審査の機械化及び効率化に関する意見交換等を実施したほか、商標分野における今後の協力に向けた双方の関心事項について議論を行った。1 SIPO:State Intellectual Property Office of the People’s Republic of China2 SAIC:State Administration for Industry and Commerce of the People’s Republic of China3 従前、専利は国家知識産権局(SIPO)、商標は国家工商行政管理総局(SAIC)が所管していたところ、2018年3月の第13期全国人民代表大会において、中国政府(国務院)機構改革方案が可決されたことを受け、専利、商標ともにSIPOが所管することとなった。
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