特許行政年次報告書2018年度版
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国際的な知的財産制度の動向第1章特許行政年次報告書2018年版262のもと、2015年12月に中国国務院から「新たな情勢における知的財産強国建設の加速に関する若干意見」が公布された。さらに、知財保護環境の改善、知財運用収益の顕在化、知財総合能力の向上を発展目標として、2016年12月に中国国務院から「十三五期間における国家知的財産権保護と運用計画」が公布された。これらの国家政策に基づき、中国では、政府機関や地方政府等、様々なレベルで各種の知的財産政策が策定されている。(3)SIPOの取組SIPOは、特許、実用新案、意匠に関する業務を所管する、国務院直属機構である。①SIPOの政策動向a. 制度改正に向けた動きア)専利法改正に向けた動き中国では、中華人民共和国専利法という一つの法律によって、発明、考案、意匠が、それぞれ「発明専利」、「実用新型専利」、「外観設計専利」として保護されている。同法は、1985年施行、1993年に第一次改正法施行、2001年に第二次改正法施行、2009年に第三次改正法施行、と約8年おきに改正がなされてきた。第四次改正については、専利保護の強化、専利活用の促進、専利水準の向上等の観点からの検討を経て、2015年4月にSIPOによる専利法改正案(意見募集稿)、同年12月に中国国務院法制弁公室による専利法改正案(送審稿)の公開意見募集が行われた。2018年3月に国務院が発表した「2018年立法作業計画」では、全国人民代表大会での審議対象案件として、専利法改正が挙げられている。イ)職務発明条例制定に向けた動き中国における職務発明は、専利法及び専利法実施細則で規定されており、原則、使用者b. 冒認商標出願への対応冒認商標出願について、日本国特許庁は中国政府との情報交換や意見交換を通じて、適正な審査が行われるよう協力を進めると共に、この問題に対処するためのユーザーへの支援サービスとして、2008年6月に公表した「中国・台湾での我が国地名の第三者による商標出願問題への総合的支援策」に基づき、商標検索・法的対応措置に関するマニュアルを作成し、都道府県、政令指定都市、農業関連団体等に配布するなど、幅広く情報提供を実施している。また、北京・台北に「冒認商標問題特別相談窓口1」を設置して、我が国の自治体等関係者の相談に対応している。さらに、冒認商標出願問題対策としては、先に商標権を取得することが重要であるが、中小企業にとっては出願・弁理士・翻訳の費用等の負担が大きいことに鑑み、JPOは、外国出願に要する費用の補助も行っている。加えて、2015年度からは冒認出願等により海外で訴えられた場合の訴訟費用の助成、2016年度からは冒認商標を取り消すための係争費用も助成対象とするなど、支援を拡充している。(2)近年の知的財産政策の動向中国では、「国家知的財産権戦略綱要」(2008年公表)による第1段階の5年間の目標を達成したとして、さらに国家知的財産戦略を深化させるために、2015年1月に中国国務院から「国家知的財産戦略を深化させて実施する行動計画(2014-2020年)」が公布され、1万人当りの発明専利保有数、専利出願の実質審査平均期間等について、2014-2020年の主要予測指標が定められた。また、国家知的財産戦略の実施を徹底し、知的財産権重点分野の改革を深化し、より厳格的な知的財産権保護を実施し、新技術や新産業、新業態の発展を促進し、産業の国際化レベルを向上させ、大衆創業・万衆創新を保障、奨励する方針1 http://www.jpo.go.jp/torikumi/kokusai/kokusai2/shohyo_syutugantaisaku.htm1
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