特許行政年次報告書2018年度版
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特許行政年次報告書2018年版263第1章第2章第3部・国際的な動向と特許庁の取組最近では、2015年11月1日よりさらに3年間試行期間が延長された。(4)SAICの取組SAICは、市場監督管理と関連する行政法執行業務を主管する国務院直属機関である。その一部局として、商標登録業務及びその管理業務、異議申立ての裁定、馳名商標(著名商標)の認定、商標権侵害事件の調査及び処理等を行う「商標局」、拒絶査定不服審判、異議決定不服審判、不正登録等による取消審判、不使用取消審判、馳名商標の認定等を行う「商標評審委員会」を傘下に有する。①SAICの政策動向a. 制度改正第三次中国商標法改正については、改正商標法が2013年8月に全国人民代表大会常務委員会で可決され、2014年5月1日より施行された。改正商標法は、出願人の利便性向上や公平競争の市場秩序の維持、商標権の保護強化等を目指したものである。また、下位法令である中国商標法実施条例は、2014年5月1日に改正実施条例が施行された。審判手続に関するSAICの局令である「商標評審規則」は、2014年6月1日に改正規則が施行された。同じくSAICの局令である馳名商標認定保護規定は、2014年7月3日公表された(公表の30日後に施行)。そのほか、人民法院による商標事件審理の管轄、法律適用等の問題について制定した、最高人民法院「改正商標法の施行決定後の商標事件の管轄と法律適用の問題に関する解釈」や、改正商標法施行に伴う、商標審査、商標審判、商標監督管理に関する経過措置についての通知を定めた、「SAICによる改正実施後の《中華人民共和国商標法》に関する問題の通知」等についても公布、施行されている。そして、第三次商標法改正に対応した基準策定及び商標審査、商標審理の更なる適正化に帰属するものとされ、使用者・従業者間で契約がある場合はそれに従った報奨や報酬、契約がない場合には、法定された支払方法、最低金額及び料率に従った報奨や報酬を与える必要があるとされている。しかし、専利法以外の知的財産関係法では同様の規定がないこと、専利法については使用者に帰属することで従業者の権利が無視され発明に対するインセンティブが働かないこと等を課題として、これまでに幾度の公開意見募集及び検討作業が行われ、2015年4月、条例の形式で職務発明に係る手続を定める「職務発明条例」草案(送審稿)が国務院法制弁公室から公表された。条例草案は、発明報告制度1や、報奨や報酬の支給義務や額の算定、事業体による職務発明の譲渡に係る発明者の権利、国有企業等における職務発明の不実施の取扱い、税制上の優遇措置、監督管理部門における事業体による職務発明制度の履行状況の監督検査の実施、発明者氏名表示権・報奨・報酬及び権利帰属に係る紛争の取扱い、事業体と発明者との取り決めの登録等が盛り込まれた案となっている。b. 審査体制の強化SIPOは、審査官の採用数拡大を柱とする審査体制の強化を進めており、2010年に発表された全国専利事業発展戦略(2011-2020年)において、2015年までに審査官数を9,000名とする目標が掲げられた。この方針の下、SIPOの下部組織である専利審査協作中心を北京、江蘇、広東、河南、湖北、天津、四川、福建に設立した。2016年末におけるSIPO及び各センターの審査官数は、1万人超となっている。c. 特許審査ハイウェイ(PPH)の拡大SIPOは、2011年11月の日中PPH 試行プログラムの開始を皮切りにPPHの対象国を徐々に拡大している。日中PPH 試行プログラムは、1 発明者における事業体への発明の報告義務と事業体の回答義務、職務発明について知的財産権を出願・放棄する場合の事業体の発明者への通知義務等であり、時期的制限を含む。

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