特許行政年次報告書2018年度版
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Column 32 特許行政年次報告書2018年版265第1章第2章第3部・国際的な動向と特許庁の取組中国知財体制の進展日本貿易振興機構 北京事務所習近平国家主席は、2018年4月10日、ボアオアジアフォーラムの年次総会での講演で、対外開放を拡大するとして、知的財産権保護の強化を含む4つの措置に言及した。その中で、国家知的財産権局の立て直しを図り、「法執行を強化し」、違法行為によるコストを大幅に引き上げることで、法律の抑止力を十分に発揮させていくとしている。そこで、「知財関係部門の再編」と「知的財産関連裁判の改革促進」を紹介する。1.中国知財関係部門の再編2018年3月、中国国務院は全国人民代表大会において、5年ぶりとなる機構改革案を発表した。機構改革案では、知的財産権の創造・保護・活用を強化することはイノベーション型国家建設のために重要な方策であるとし、また、専利と商標を別々に管理することで行政の管轄が重複している問題を解決し、知的財産権の管理体制を改善することを狙いとして国家知識産権局を再編する方針を示した。改革案では、国家工商行政管理総局の商標管理業務、国家質量監督検験検疫総局の原産地表示の管理業務が国家知識産権局に統合されることになる。なお、専利権、商標権に関する法執行業務は、国家知識産権局を管轄する国家市場監督管理総局が担う。2.知的財産関連裁判の改革促進2017年11月20日、習近平主席が主催した第19回中央改革全面的推進指導グループ第1回会議において「知識産権裁判分野の改革・イノベーション強化における若干の問題に関する意見」が取り纏められた。そして、2018年2月27日、中国共産党中央員会弁公庁及び中華人民共和国国務院弁公庁が、同意見を発表した。この中で、知的財産権保護は、イノベーション促進の基本的な手段であり、イノベーションの原動力を保証するものであり、国際競争力の主な要素であると述べられている。また、訴訟の証拠ルールの構築、知的財産権の価値を反映する権利侵害の損害賠償制度の構築、国レベルの控訴審査の仕組みの研究、北京・天津・河北の三地域をはじめ複数地域の技術系知的財産権事件の一括管轄の模索など、12の具体的措置が掲げられた。この「意見」が出される前から、2018年3月までに、地域管轄を跨ぐ知財法廷が南京、武漢、成都、杭州、西安などの15か所の中級人民法院に設置された。また、2018年1月には、最高人民法院から、原告の賠償請求額を全額認めた案例や商標権侵害の悪質性を認めた案例をまとめた「財産権・企業家の合法権益を保護した典型案例」が出されるなど、知財裁判分野の改革は進んでいる。この改革が更に加速することに期待したい。国家知識産権局国家知識産権局全職掌商標管理の職掌原産地地理的表示管理の職掌国家工商行政管理総局国家品質監督検査検疫総局
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