特許行政年次報告書2018年度版
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国際的な知的財産制度の動向第1章Column 33 特許行政年次報告書2018年版270韓国における外国語による知財訴訟について日本貿易振興機構 ソウル事務所日本の知財高裁に相当する韓国の特許法院では、全体の1/3の事件について外国人が関与することから、国会議員や行政、学界、産業界などから構成されるIP Hub Court推進委員会において、韓国の知財裁判所を国際知財訴訟における中核裁判所(ハブコート)にする議論がなされてきた。2017年6月に、特許法院にて英語模擬裁判が公開されたが、その後半年も経たない2017年11月24日に、知財訴訟を担当する裁判所が国際事件を専門に取り扱い、外国語での弁論及び証拠提出が可能となる「国際裁判部」を設置する法院組織法の改正法案が国会を通過した。通常は韓国語で行う弁論及び証拠提出を外国語でも可能とする本法案は、外国人に有利な改正であることから、国会通過は難しいのではないかとも言われていたため、実際に法案が通過したことに驚いた関係者もいたようだ。この法院組織法は2018年6月13日に施行され、特許法院などに国際裁判部が設置される見通しである。国際裁判部の運営に必要な詳細については大法院規則で定められることになるが、2018年4月23日にテジョンで開催された「特許法院開院20周年記念国際シンポジウム」において、特許法院側より、許容される外国語は当面は英語とし、今後国際裁判の定着と事件数とを考慮して日本語や中国語など他の外国語に拡大予定であることが示された。また、国際裁判部で事件を扱うためには両当事者の同意が必要とのことである。今年は韓国の知財訴訟が大きく変わる年になりそうだ。<韓国特許法院(テジョン)>
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