特許行政年次報告書2018年度版
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特許行政年次報告書2018年版275第1章第2章第3部・国際的な動向と特許庁の取組(1)我が国との関係①我が国とASEANの取組我が国とASEAN諸国の関係では、ASEAN知的財産協力作業部会(AWGIPC)を通じ、知的財産分野における協力の在り方を議論してきた。2012年2月に第1回日ASEAN特許庁長官会合が東京で開催され、ASEAN諸国の経済成長のための知的財産保護強化及びそれを実現するための日本の協力を確認した「東京知財声明」が採択された。さらに、同年7月には、第2回日ASEAN特許庁長官会合がシンガポールにて開催され、日本国特許庁とASEAN 諸国の知的財産庁との間で知的財産に関する協力覚書を取り交わした。同覚書では、国際条約への加盟の遅れ、不十分な審査能力、域内各国の保護レベル格差といったASEAN 諸国が抱える課題に対応するため、また、進出する日系企業の円滑な事業活動・知的財産活用のため、具体的なアクションプラン(行動計画)を設けることとなった。同年以降、日ASEAN特許庁長官会合において、我が国のASEAN諸国への知的財産協力を毎年レビューし、アクションプランを策定している。2017年5月には、第7回日ASEAN特許庁長官会合を金沢で開催し、同地域における特許審査基準の策定・改訂に向けた協力、国際条約加盟及び運用の支援、審査官育成・審査業務管理に関する知見の共有、知的財産の商業化・エンフォースメント強化に関する支援を含む「日ASEAN知的財産権行動計画2017-2018」に合意した。また、ASEANの設立50周年を迎え、中長期の日ASEAN知財協力の方向性を議論し、「日ASEAN知財共同声明」を採択した。ASEANにおける動向7ASEAN諸国の知的財産制度の整備状況は、知的財産制度が整い、先進的な取組を行う国から、知的財産制度の発展が初期段階の国まで様々である。そのような中、ASEAN諸国は、投資環境を整備するため、審査の迅速化や模倣品対策等の知的財産制度の整備・強化に向けて積極的に取組を行っている。本節では、我が国との関係に加え、近年の知的財産政策の動向、ASEAN各国の取組を紹介する。また、 2017年11月の日ASEAN首脳会議では、これまでの日ASEAN特許庁長官会合を通じた知財協力の成果を賞賛する議長声明が採択された。②我が国との二国間での取組我が国は様々な場面でASEAN各国との知的財産庁トップ同士の対話を継続している。a. ブルネイブルネイ知的財産庁長官と日本国特許庁長官が2017年5月に会談し、新たな特許審査協力やマドプロの運用支援について議論した。また、2017年8月、ブルネイ首相府副大臣とブルネイ駐箚特命全権大使の陪席のもと、ブルネイ知的財産庁長官と日本国特許技監は、新たな特許審査協力(PPHプラス)の開始の合意に関するセレモニーを開催した。b. カンボジア2017年5月の日ASEAN特許庁長官会合の際に、カンボジア商業省副大臣と日本国特許庁長官が会談し、特許の付与円滑化に関する協力(CPG)や審査官向け研修の支援についてさらに協力を進めることを合意した。c. インドネシア2018年2月のWIPOハイレベルフォーラムの際に、インドネシア知的財産総局長と日本国特許庁長官が会談し、インドネシアへの審査官の中長期派遣、インドネシアの法改正、IT化や審査官向け研修支援について議論した。d. ラオスラオス知的財産局長と日本国特許庁長官は2017年5月の日ASEAN特許庁長官会合におい
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