特許行政年次報告書2018年度版
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特許行政年次報告書2018年版283第1章第2章第3部・国際的な動向と特許庁の取組(1)ブラジル①我が国との関係我が国との関係においては、2010年4月に、日本国特許庁とブラジル産業財産庁が知的財産分野における協力覚書に署名し、この協力覚書に基づき、人材育成分野等での協力を進めている。国際審査官協議を2012年から開始しており、これまでに日本国特許庁の特許審査官延べ4名をブラジル産業財産庁へ派遣し、ブラジル産業財産庁から延べ2名の特許審査官を受け入れた。また、2016年10月には、日本国特許庁は日本貿易振興機構(JETRO)サンパウロ事務所に知財専門家を派遣し、ブラジルをはじめとした南米各国との連携を強化している。なお、2017年8月に知的財産分野における協力覚書を改定し、ブラジル産業財産庁との協力関係を拡大しており、同年12月には、先行技術文献調査外注の導入を検討するブラジル産業財産庁の要請を受けて、専門家2名をブラジルへ派遣している。また、2009年より、我が国とブラジルの間の官民による情報交換及びビジネス環境の改善、両国の貿易・投資の促進を目的とした日伯貿易投資促進合同委員会が年1回の頻度で開催されており、知的財産分野においても協議が行われている。その後、これに産業協力をテーマに加えた日伯貿易投資促進・産業協力合同委員会1として開催することとし、2016年10月の同会合では、特許審査のワークシェアリングについて検討するワーキンググループの新設についての覚書を署名した。その後、2016年11月及び2017年2月に同ワーキンググループで引き続き議論がなされた結果、特許審査ハイウェイ(PPH)開始の合意に至り、特許審査ハイウェイ(PPH)の試行を2017年4月1日より開始している。ただし、ブラジル産業財産庁が受け付ける特許審査ハイウェイ中南米における動向10(PPH)申請には、「対象となる技術分野」及び「一出願人あたりの申請可能件数」に制限があり、特許審査ハイウェイ(PPH)の「対象となる技術分野」の拡大を目的として、実務者による意見交換を行う等、交渉を続けている。②近年の知的財産政策の動向及びブラジル産業財産庁の取組ブラジルでは、特許審査着手が出願日順に行われるが、一次審査通知までの期間が平均7年2(2016年時点)と、審査の遅延が課題となっており、ブラジル産業財産庁は、審査遅延解消のために特許・商標・意匠の処理件数について成果目標を定めた年間行動計画を2017年4月から初めて策定し、2018年1月に発表された年間行動計画では、今年やり残してはならない事項として、特許審査遅延の削減、マドリッド協定議定書の加盟準備、不動産コストの削減の3つを挙げている。ブラジル産業財産庁は、審査遅延を削減するために、2012年時点で240名であった特許審査官を、2018年1月時点で343名まで増員するとともに、2016年1月からは、米国との間で特許審査ハイウェイ(PPH)の試行を開始し、前記したように日本国特許庁との間でも2017年4月から開始している。また、2017年12月に欧州特許庁(EPO)と特許審査ハイウェイ(PPH)を試行開始するとともに、2018年2月に中国国家知識産権局(SIPO)と特許審査ハイウェイ(PPH)を試行開始し、特許審査ハイウェイ(PPH)の対象国を徐々に拡大している。ブラジル産業財産庁は、ブラジル商工サービス省とともに、医薬品の特許出願を除く特許審査の審査遅延を解消するために、特許の出願・認可手続を簡素化する規則案について、2017年7月にパブリックコメントを募集した。1 2013 年に「日伯貿易投資促進産業協力合同委員会」として改組された。2 World Intellectual Property Indicators 2017:http://www.wipo.int/edocs/pubdocs/en/wipo_pub_941_2017.pdf2
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