特許行政年次報告書2018年度版
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特許行政年次報告書2018年版287第1章第2章第3部・国際的な動向と特許庁の取組(1)中東中東地域はアジアと欧州をつなぐ貿易の中継点として重要な役割を果たしていると同時に、模倣品の流通経路となっているとの指摘もなされている。日本国特許庁は日本貿易振興機構(JETRO)ドバイ事務所に知財専門家を派遣しており、2016年2月には、日本政府の支援の下、ドバイにおける各国政府機関等との連係を強化し、駐在日系企業同士が情報共有を図ることを目的に、模倣品対策に取り組む中東知的財産研究会(中東IPG)1が発足した。中東IPGの活動の一環として、我が国は、2017年11月にアラブ首長国連邦及びサウジアラビア政府の執行機関に対し真贋判定に関するセミナーを実施するなど、模倣品取締りに向けた協力を行っている。湾岸諸国(バーレーン、オマーン、クウェート、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタール)においては、1998年より広域特許庁としての湾岸協力会議(GCC)特許庁が設けられている。2018年3月現在、GCC 加盟国における商標制度の統一をはかる統一GCC 商標法がクウェート、バーレーン、サウジアラビアにおいて施行されており、近く他のGCC 加盟国も同法が施行される見通しである。また、2016年9月にクウェートが特許協力条約(PCT)に加盟したことで、GCCメンバー国全てがPCTへ加盟したため、現在広域特許庁としてのGCCがPCT加盟を目指している。日本国特許庁との関係においては、2017年9月、GCCに日本国特許庁の職員を派遣し、特許審査実務に関する日本の知見を共有すべく、研修を実施した。イスラエルは、2009年のWIPO加盟国総会において国際調査機関(ISA)として承認され、2012年6月から業務を開始した。また、我が中東諸国、アフリカにおける動向11国とイスラエルとの間では2012年3月より特許審査ハイウェイ(PPH)が試行され、さらに両国とも2014年に立ち上げられた「グローバルPPH」に参加しており、日本出願に基づくイスラエル出願に関して、所定の手続により早期審査の適用を申請することができるようになった。なお、2010年9月には、イスラエルにおいてマドリッド協定議定書が発効している。トルコは、2017年に国際調査機関(ISA)及び国際予備審査機関(IPEA)に加盟し、業務を開始した。また、同年1月より改正産業財産権法が施行されている。日本国特許庁との関係においては、これまでも審査官向け招へい研修への受け入れ等の協力を行ってきたが、日本国特許庁とトルコ特許庁は2016年10月、両国の知財制度・運用の理解促進、PPH導入に向けた両庁の協力や人材育成分野における協力などによる知財制度の向上、及び情報発信などによるユーザーとの交流促進等、その関係をさらに強化することを目的として、協力覚書に署名した。また両庁は、この協力覚書に基づき、2018年2月に、特許審査ハイウェイ(PPH)の試行を同年4月1日より開始することに合意した。(2)アフリカアフリカには、主に英語圏の国々が加盟しているアフリカ広域知的財産機関(ARIPO)2、主にフランス語圏の国々が加盟しているアフリカ知的財産機関(OAPI)3という二つの広域特許庁が存在する。我が国は、WIPOに対して任意拠出金を支出しており、この拠出金を基に「WIPOジャパン・トラスト・ファンド」が組まれ、これらの広域特許庁を始めアフリカ諸国の知的財産庁の能力向上を支援している1 2018年3月現在、メンバー企業は全26社。主な活動内容は、2~3か月に1回の定期会合、中東政府機関等向けの知財セミナーや意見交換の実施、他の知財団体との連携・協力など、多岐にわたる。2 アフリカ広域知的財産機関(ARIPO):加盟国(19ヶ国)は、ボツワナ、ガンビア、ガーナ、ケニア、レソト、リベリア、マラウイ、モザンビーク、ナミビア、ルワンダ、サントメ・プリンシペ、シエラレオネ、ソマリア、スーダン、スワジランド、タンザニア、ウガンダ、ザンビア及びジンバブエ。3 アフリカ知的財産機関(OAPI):加盟国(17ヶ国)は、ベナン、ブルキナファソ、カメルーン、中央アフリカ、チャド、コンゴ、コートジボワール、赤道ギニア、ガボン、ギニア、ギニアビサウ、マリ、モーリタニア、ニジェール、セネガル、トーゴ及びコモロ。
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