特許行政年次報告書2018年度版
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特許行政年次報告書2018年版291第3部・国際的な動向と特許庁の取組第1章第2章(1)日米欧中韓五庁(IP5)会合①概要2016年の世界の特許出願件数約313万件のうち、日本国特許庁(JPO)、米国特許商標庁(USPTO)、欧州特許庁(EPO)、中国国家知識産権局(SIPO)、韓国特許庁(KIPO)の五庁への出願は約265万件と約8割を占めている。五庁は知的財産における世界的な取組をリードするため、2007年5月に米国・ハワイにて五庁長官会合を初めて開催した。五庁長官会合では、出願件数・ワークロードの増加に対応するため、審査結果の相互利用、手続の簡素化、審査の質の維持・向上等の課題について3つの作業部会(WG1: 分類調和、WG2: 情報技術関連、WG3:審査関連)等で検討を行っている。2017年6月に開催された第10回五庁長官会合では、これまでの五庁ビジョンを見直し、(i)制度運用調和、(ii)ワークシェアの更なる推進、(iii)質の高いタイムリーな審査、(iv)特許情報へのシームレスなアクセス提供、を含む新たな五庁ビジョンに合意した。そして、今後の五庁協力の目指すべき方向性(制度運用調和、品質管理、ワークシェア、特許情報サービス)を掲げた五庁共同声明2017に合意した。その他、五庁プロジェクトの評価・再編については2018年の五庁長官会合にお多国間会合における取組1いて新たな協力体制の承認を受けること等に合意した。②主要プロジェクト概要a. 作業部会1:分類調和五庁協力のもと、各庁の詳細な内部分類を用いて、国際特許分類(IPC)を細分化させる取組を実施している。現在、(i)整合している内部分類をIPC 化する活動(Activity i: 内部分類改正の結果、整合する場合を含む)、及び、(ii)新規技術に対応した分類を協働して創りIPC化する活動(Activity ii)からなる、GCI(Global Classication Initiative)の枠組みで進められており、IPCの細分化の取組は着実に実施されている。2017年から、いくつかの第4次産業革命に関連した技術についてIPC化に関する活発な議論が行われている。JPOからは、2017年2月にIoT関連技術のIPC化を提案し、早期の実現を目指している。b. 作業部会2:情報技術関連(ⅰ)特許情報2013年6月に開催された第6回五庁長官会合において、特許審査における先行技術調査の対象である特許公報データ等の特許情報に関し、障壁なき特許情報の普及を目的としたグローバルな知的財産環境の整備に向けて企業がグローバルに事業展開を行うためには、自国外においても安定した知的財産の保護を受けられることが必要不可欠である。IT技術の進展、経済連携協定の締結等を通じて、日本企業の海外進出が進むことが予想される中、知的財産権をあらゆる国で円滑かつ予見性高く取得し、活用できる環境がますます強く求められている。日本国特許庁では、日米欧中韓の五大特許庁(以下、「五庁」という。)会合や日中韓特許庁会合等における制度調和や特許分類に関する議論をリードする一方、成長著しいASEAN やインドのような新興国とも連携強化を図るなど、国際的な枠組みの中においてグローバルな知的財産環境の構築を目指している。第2章
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