特許行政年次報告書2018年度版
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グローバルな知的財産環境の整備に向けて第2章特許行政年次報告書2018年版292c. 作業部会3:審査関連(ⅰ)五庁による特許審査ハイウェイ五庁間での特許審査ハイウェイ(IP5 PPH)の試行を開始するとともに、PPHの更なる改善を目指す取組である。2014年1月の試行プログラム開始により、これまでPPHを実施していなかった欧中、欧韓の間でもPPHが開始され、通常型PPH、PPH MOTTAINAI、PCT-PPHを含む全てのPPHの枠組みが五庁間で相互に利用可能となった。また、更なるユーザーの利便性向上に向けて、PPHによる審査待ち期間短縮等の効果を客観的に把握可能となるようにPPH統計情報の公開を提案するとともに、統計情報を公開する際に統一的な指標を設定すべく議論をリードしている。(ⅱ)審査実務と品質マネジメントの共通ルール審査実務のルール及び品質マネジメントシステムについて、五庁間で情報を交換し、分析・研究を行い最終的には共通化することを目的とするプロジェクトである。また、五庁の間で品質管理に関する相互理解・相互信頼を高めると共に、ワークシェアを強化しつつ、各庁の審査の質を向上させるために、五庁の品質管理担当者が一堂に会する品質マネジメント会合(IP5 Quality Management Meeting)を、2014年10月より毎年開催している。2017年11月には第4回品質マネジメント会合が開催され、品質に関するユーザー意見の受付等の各庁の取組についての情報共有、五庁ウェブサイトの活用についての議論を行った。d. 特許制度調和専門家パネル(PHEP)2014年6月に開催された第7回五庁長官会合において、特許制度調和に向け、ユーザーから要望が出ていた調和の議論を進める項目について五庁間で検討され、記載要件、出願人による先行技術の開示義務及び発明の単一性の三項目を、優先的に議論を進める項目と「五庁特許情報ポリシー」が合意された。同ポリシーには、特許庁は特許情報をマージナルコスト又は無償で提供すべきとする基本原則、及び、特許庁間で無償交換された特許情報の利用範囲や条件が定められている。「五庁特許情報ポリシー」の合意を受けて、2014年6月に同ポリシーに基づいて交換する特許情報の対象や実施時期に関するアクションプランを合意し、同年7月より同ポリシーに基づく特許情報の交換を開始している。(ⅱ)グローバル・ドシエ1グローバル・ドシエとは、各国特許庁のシステムを連携させることにより仮想的な共通システムを構築し、各国特許庁が保有する特許出願の手続や審査に関連する情報(ドシエ情報)の共有やITを活用した新たなサービスの実現を目指す構想である。ドシエ情報の共有について、日本国特許庁は、五庁の複数庁に出願された同一発明のドシエ情報を一括取得し、見やすい形式で提供するITサービスである「ワン・ポータル・ドシエ(OPD)」を推進し、五庁で主導的な役割を担っている。2014年3月には、日本国特許庁は世界知的所有権機関(WIPO)と協力し、OPDと、WIPOが提供するドシエ情報相互参照システムであるWIPO-CASE2とを連携する技術を確立し、全てのWIPO-CASE参加国に日本のドシエ情報を提供可能とした。更に、我が国では2016年7月から特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)を通じて、一般ユーザーにもOPDのサービス提供を行っている。また、ITを活用した新たなサービスの実現について、五庁は短期的優先五項目に取り組んでいる。2016年6月に日本で開催された五庁長官会合では、短期的優先五項目の具体的な実施内容、今後の進め方等について合意し、引き続き各取組を進めている。1 第2部第5章2.(2)グローバル・ドシエ参照2 Centralized Access to Search and Examination

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