特許行政年次報告書2018年度版
321/372

特許行政年次報告書2018年版295第3部・国際的な動向と特許庁の取組第1章第2章国で適切に保護、活用される環境整備を図ることを目的として2011年12月に創設された枠組みである。2017年11月にスペイン・アリカンテで開催された第6回TM5年次会合では、JPOがリードする「悪意の商標プロジェクト」、「イメージサーチプロジェクト」等を含む計13の協力プロジェクトについて各リード庁から進捗の報告及び今後の進め方に関する提案が行われ、新たに3つの協力プロジェクトを採択した。また、会合2日目には、各国の業界団体・代理人団体等のユーザー団体を招いたユーザーセッションを開催し、「悪意の商標」、「品質管理」等のテーマについて意見交換を行った。②プロジェクトの概要(括弧内は各プロジェクトの議論をリードする担当庁)a. 悪意の商標プロジェクト(JPO)本プロジェクトは、近年、世界的な問題となっている「悪意の商標」について、TM5各庁の制度・運用に関する情報交換を行うとともに、ユーザーに対して情報提供を行うことを目的としている。これまで、3回のセミナーを開催したほか(2013年10月東京、2014年5月香港、2016年3月東京)、「悪意の商標」に対応するためのTM5各庁の制度・運用報告書の取りまとめ(2014年12月)及び公表(2015年4月)を行った。また、2017年5月、TM5各庁における悪意の商標出願に関する事例を掲載した「悪意の商標出願事例集」を作成し、ユーザーに広く周知するため、国際商標協会(INTA)2と共催でジョイント・ワークショップを開催した。「悪意の商標出願事例集」は、TM5ウェブサイト3において公開している。今後は、TM5以外の国の事例を追加した拡充版の事例集を作成する予定である。へのID5関連情報提供を行っている。j. 新しい技術の意匠の保護に関する実務の研究(EUIPO・USPTO)五庁における、GUI等、新しい技術に由来した意匠の保護に関する法令及び実務の情報を収集・整理し、比較研究を行うプロジェクト。プロジェクトの成果物として、各庁が適用する法令の規定や審査基準等に基づく実務運用の比較をまとめた調査報告書を作成する予定である。k. ID5庁による優先権書類の交換に関する研究(SIPO・USPTO)五庁における優先権書類の電子的交換システムの導入可能性について検討するプロジェクト。WIPOのDAS(デジタル・アクセス・サービス)に代表される優先権書類の電子的交換システムの導入可能性について各庁が検討し、電子的交換の実現に向けた五庁協力を継続していくことが予定されている。l. 潜在的な経済要因及び各知財庁の施策がグローバルな意匠出願に与える影響の分析(EUIPO)各庁における将来の予算や人員配分、最適な事業計画を行うために、潜在的経済要因や知財庁の施策効果等を考慮した、より正確な出願件数予測ツールの開発について検討するプロジェクト。各庁における予測手法についての相互理解を深めた上で、出願予測ツール開発の実現可能性について検討する予定となっている。(4)商標五庁(TM5)会合①概要「TM5」は、JPO、USPTO、EUIPO、中国国家工商行政管理総局(SAIC)1、KIPOの商標五庁間の協力により、各国企業の商標が世界各1 従前、専利は国家知識産権局(SIPO)、商標は国家工商行政管理総局(SAIC)が所管していたところ、2018年3月の第13期全国人民代表大会において、中国政府(国務院)機構改革方案が可決されたことを受け、専利、商標ともにSIPOが所管することとなった。2 国際商標協会(INTA):191カ国の政府機関、教育機関、企業など7,200以上の会員からなる団体。3 http://tmfive.org/3

元のページ  ../index.html#321

このブックを見る