特許行政年次報告書2018年度版
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グローバルな知的財産環境の整備に向けて第2章特許行政年次報告書2018年版298じる事態が米国及び欧州を中心に発生している。そこで、TM5の枠組みを利用し、詐欺的請求に関する情報提供を行うことを目的として、第6回TM5年次会合において、USPTOから新規プロジェクトとして提案され、採択された。今後、詐欺的請求の問題と対処方法について、各庁から情報収集を行う予定である。(5)日ASEAN特許庁長官会合ASEAN諸国は近年目覚ましい経済発展を遂げており、今後、高・中所得者層が増加することで、高品質・高付加価値な製品・サービスに対する需要が高まり、優れた技術、デザイン、ブランドに対する需要が増加することが予測される。また、域内の経済活動の自由化を目的としたASEAN 経済共同体(AEC)が2015年に実現され、我が国にとってASEAN諸国はこれまで以上に重要な一大経済圏となることが予想されている。このような状況の下、貿易・投資を促進する上で重要な基盤となる知的財産権制度、運用の改善が急務となっている。日本国特許庁は、我が国企業のグローバルな事業活動支援のためにASEAN諸国への知的財産協力を強化している。2012年より毎年、日ASEAN特許庁長官会合を開催し、日本国特許庁とASEAN諸国の知的財産庁との間で取り交わした知的財産に関する協力覚書に基づいて、ASEAN諸国における知的財産権制度や審査手続の透明化及び効率化、知的財産権制度・運用の向上、ユーザーによる知的財産権制度の活用促進、知的財産の普及啓発等を促進するべく、日ASEAN知的財産アクションプランを策定し、ASEAN諸国への知的財産協力を実施している。直近では、2016年7月にインドネシアにおいて、第6回日ASEAN特許庁長官会合を開催し、第7回日ASEAN特許庁長官会合については、2017年5月に金沢で開催した。また、 2017年11月の日ASEAN首脳会議では、これまでの日ASEAN特許庁長官会合を通じた知財協力の成果を賞賛する議長声明が採択された。深めることを目的とするプロジェクト。マドリッド協定議定書に基づきTM5各庁に出願された商標について調査を実施している。第6回TM5年次会合では、各庁が追加の50件について調査を行うことについて合意した。2018年の第7回TM5年次会合において調査結果が提示される予定である。n. TM5各庁の商品・役務表示の記載方法に関する情報提供プロジェクト(KIPO)ユーザーの利便性のために、TM5各庁の商品・役務表示の記載方法に関する情報を集め、それをTM5ウェブサイトに掲載することを目的とするプロジェクト。現在まで200件の事例について調査を行っており、2018年には追加の100件を調査し、2018年の第7回TM5年次会合においてその結果が提示される予定である。o. 優先権書類プロジェクト(EUIPO・新規提案)パリ条約に基づく優先権主張に係る提出書類は、提出先の各庁における審査実務に従って翻訳し、又は証明書類等を添付する必要があるが、各庁における審査実務に差異があるため、提出書類を判断する官庁側だけでなく、提出書類を作成するユーザー側にとっても多くの負担があった。そこで、ユーザーの優先権書類に係る負担軽減を目的として、TM5各庁の優先権書類の実務の情報を収集・研究することが、第6回TM5年次会合において、EUIPOから新規プロジェクトとして提案され、採択された。今後、各庁における優先権書類の受諾要件に関するリストを作成し、最終的に比較研究した結果をTM5ウェブサイトに公表する予定である。p. 詐欺的請求プロジェクト(USPTO:新規提案)第三者が、公開されている商標出願及び商標登録データを悪用し、官庁や政府機関に似せた名称で、出願人又は権利者等に詐欺的請求書を送付することで、出願人等に混乱が生

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