特許行政年次報告書2018年度版
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特許行政年次報告書2018年版301第3部・国際的な動向と特許庁の取組第1章第2章(1)世界知的所有権機関(WIPO)WIPOは、ジュネーブに本部を置く、国連の専門機関である2。加盟国は日本を含め191か国3であり、知的財産に関する諸条約の管理業務(特に国際出願の受理・公報発行)のほか、知的財産に関するルールメイキング、知的財産分野での途上国支援等を実施している。WIPOの予算は、国際出願業務の運営に係る手数料収入が全体の9割以上を占めており、中でも特許協力条約(PCT)に基づく国際出願に係る手数料収入が全体の約4分の3を占める。国際フォーラムにおける取組2知的財産に関する国際的な議論は、従来から知的財産保護に関する国連の専門機関である世界知的所有権機関(WIPO)や、世界貿易機関(WTO)のTRIPS理事会1において活発に行われてきた。これらに加え、近年では、地域レベルでの経済協力の枠組みであるアジア太平洋経済協力(APEC)等においても、知的財産が重要な課題として取り上げられている。本節では、各フォーラムにおける議論及び我が国の取組について紹介する。①WIPO加盟国総会WIPO加盟国総会は、WIPO全体の予算の策定、事務局長の任命、PCTやマドプロの規則改正の承認等、WIPO全体に関わる事項についての意思決定を行う会合であり、毎年秋に開催されている。第57回加盟国総会は、2017年10月に開催され、日本からは、宗像特許庁長官、嶋野特許技監を含む代表団が出席した。会合冒頭、我が国を代表して宗像長官が一般演説を行い、新たな技術がもたらす課題を克服して「IP4.0(Intellectual Property 4.0)」とも言うべき新たな知財制度の時代を拓くべきことを呼びかけ、国際機関として重要な役割を担うWIPOに対する期待を表明した。本総会では、2018/19年度計画予算案の承認のほか、WIPO外部事務所の新規開設、遺伝資源等政府間委員会(IGC)のマンデートの検討等、諸々の重要事項について活発な議論が行われた。WIPO加盟国総会の様子宗像長官の一般演説1 Council for Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights2 1970年に設立され、1974年に国連の14番目の専門機関となった。3 2018年3月現在WIPO本部(スイス・ジュネーブ)
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