特許行政年次報告書2018年度版
330/372
グローバルな知的財産環境の整備に向けて第2章特許行政年次報告書2018年版304b. 商標・意匠・地理的表示の法律に関する常設委員会(SCT)商標分野では、主に国名の保護について議論が行われている。国名の保護については、2014年3月の第31回会合で、ジャマイカから、国名の保護強化のために、国名と誤認混同のおそれのない場合でも国名と抵触する商標の使用を禁じる規定や、国名を含む商標の登録に際して当該国の許認可を必要とさせる規定を含む共同勧告案が提案された。また、2016年4月の第35回会合からは、ジャマイカによる共同勧告案と併せて、事務局は、将来的に各国実務の調和の可能性が高い6つの分野(収束可能範囲)を提示した。第36回会合では、そのうち更なる議論を行うことに異論が示されなかった4つ(国名の観念、記述的と判断された場合の非登録可能性、無効及び異議申立手続、標章としての使用)について優先的に議論することに合意し、続く第37回・第38回でさらに議論が深められた。地理的表示(GI)については、2015年10月のWIPO加盟国総会で、各国・地域におけるGIの保護制度についての調査をSCTにおいて行うことが決定された。これを受けて、当該調査の内容及び進め方について議論されてきたが、第38回会合(2017年10月)において、各国・地域のGI保護制度に関する調査についての作業計画が採択され、今後はこの作業計画に沿って各国への調査が行われることとなった。⑤その他a. 知的財産と遺伝資源・伝統的知識・フォークロアに関する政府間委員会(IGC)3途上国が、自国に豊富に存在している遺伝資源(GR)・伝統的知識(TK)・伝統的文化表現(TCEs)4に対して、国際的な保護の枠組2017年1月に発効された第11版であり、32のクラスと219のサブクラスで構成される。同協定は、我が国では2014年9月24日に発効した。2018年3月現在のロカルノ協定締約国は、英国、フランス、ドイツ、ロシア、中国、韓国等の54か国である。2017年11月には、ロカルノ同盟第13 回専門家委員会が開催され、我が国は締約国として正式参加した。同会合では、各締約国より提出されたロカルノ分類へのサブクラスの追加提案、またVRヘッドセットのような新規な製品を製品リスト追加する提案等について議論され、次版において、これらの議論結果が反映されることが決定した。④商標a. マドリッドシステムの法的発展に関する作業部会標章の国際登録に関するマドリッド協定議定書には2018年3月現在、日本を含む100か国が加盟している。標章の国際登録に関するマドリッド協定及び議定書(マドリッドシステム)については、制度の見直しを行うため、2005年からWIPOマドリッドシステムの法的展開に関する作業部会(なお、第4回会合までアドホックな会合とされていた。)が開催されている。2017年6月に開催された第15回作業部会においては、主に、各指定国官庁に対して個別に行うべき代替1の記録申請を、国際事務局経由で一括して行うことを可能とする提案や、限定2の審査を本国官庁、国際事務局又は指定国官庁のいずれが行うべきかに関する問題が議論された。また、同会合に合わせて開催されたラウンドテーブルにおいては、分類審査ガイドライン、同一性の認証等をテーマに、事務局が発表を行い、参加国・団体の間で意見交換が行われた。1 ある締約国において既に商標登録が存在する場合に、同一の商標が国際登録され、その締約国を領域指定すると、当該締約国における国内登録を国際登録に置き換えることができる仕組み。代替により、複数の締約国において別個に存在する国内登録を国際登録として一元管理できるようになる。2 国際登録簿に記録されている指定商品・役務について、一部の国に対して範囲を限定して審査を求める手続。3 Intergovernmental Committee on Intellectual Property and Genetic Resources, Traditional Knowledge and Folklore4 最近のWIPO における議論では、「フォークロア」ではなく、「伝統的文化表現」との用語を使用している。
元のページ
../index.html#330