特許行政年次報告書2018年度版
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グローバルな知的財産環境の整備に向けて第2章特許行政年次報告書2018年版306そして、我が国としても同課題解決に貢献すべく、WIPOの取組を支援している。とりわけ「WIPO GREEN」は、日本知的財産協会(JIPA)の構想に端を発した取組であり、我が国としてもこれを支援している。この取組は、主に途上国への環境技術移転を促進するプラットフォーム作りを目指し、提供側の技術情報、及び導入側のニーズ情報の双方をデータベースとして蓄積し、技術提供側と導入を希望する側を引き合わせるハブとしての役割を果たす、いわゆるマッチング・データベースを整備するものである。環境技術に関する特許のライセンスのみならず、ノウハウや生産プロセス、資金調達、人的役務支援等を「技術パッケージ」として提供することで技術移転取引の促進を図ろうとするものであり、実際のライセンス等の交渉は当事者同士に委ねられるが、WIPOによって契約ひな形の提供等の取引支援も行われる予定とされている。我が国政府はWIPOへの任意拠出金(WIPOジャパン・トラスト・ファンド)を通じて、データベース構築等に係る費用の一部負担、特定分野における技術ニーズ調査事業3の費用負担等、「WIPO GREEN」事業を支援している。2013年11月から運用が開始され、2018年3月現在、提供技術情報は2,994件、ニーズ情報は158件が公開されている。を狙いとするものであり、2010年9月よりWIPOのウェブサイト1上で公開している。我が国がWIPOに任意拠出を行っているジャパン・ファンド事業の一環として、WIPO日本事務所において、当該データベースに投入される成功事例の調査・収集作業が継続して進められており、2018年3月現在、214件の事例が公開されている。c. WIPO標準委員会(CWS)CWSは、2009年9月のWIPO一般総会でその設置が承認されて以来、出願番号の記載方法、国コード及びXML等、産業財産権情報の国際的なデータ交換形式の標準であるWIPO 標準に関する議論が行われてきた。2017年5-6月に開催された第5回会合では、XMLを使用したヌクレオチド等の配列表の表記に関するWIPO標準ST.26が改訂されるとともに、リーガルステータスデータの交換に関するWIPO標準ST.27及びオーソリティファイル2に関するWIPO標準ST.37が採択された。d. WIPO GREENWIPOでは、規範設定のほかにも、グローバルな課題(特に公衆衛生、気候変動、食料安全)の解決に向けて知的財産が果たすべき役割を重要視し、知的財産の面から課題解決に貢献すべく様々な検討・取組を行っている。1 http://www.wipo.int/ipadvantage/en/2 各庁が発行した公報に関する基本的な情報(公開番号、発行日等)のリストであり、データベース内の公報の存在確認(公報データ欠損の検出)のための参照元となるもの。3 提供側の技術情報に比して、登録数が極端に少ないニーズ情報を増やす目的で2014年度にWIPOが実施した調査事業。1

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