特許行政年次報告書2018年度版
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特許行政年次報告書2018年版311第3部・国際的な動向と特許庁の取組第1章第2章(1)ODAのスキームを活用した取組①ジャパン・トラスト・ファンド(世界知的所有権機関(WIPO))WIPOに対して1987年から任意拠出金を支出しており、この拠出金を基に信託基金「WIPOジャパン・トラスト・ファンド」が組まれ、国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)地域のWIPOメンバー途上国を対象として、ワークショップ等の開催、研修、専門家派遣、知的財産権庁の情報化支援等の各種事業を実施している。また、2008年、当該ファンドを拡充し、アフリカ地域における知的財産を活用した自立的経済発展を促進するためのファンドを創設した。同ファンド事業では、知的財産権制度の重要性への意識向上、知的財産法制度の整備・拡充、知的財産専門家の人材育成を目的に、ワークショップ等の開催、研修、情報化支援等を積極的に推進している(情報化支援に関しての詳細は、第3部第2章3.(3)新興国の情報化等への協力に関する取組を参照。)。(新たな協力の方向性)本ファンドが創設されてから30年が経過途上国の知的財産制度整備に向けた取組3知的財産制度は途上国にとってもビジネスの発展に有効なツールであり、かつ、必要なインフラであることから、これらの国における知的創造サイクルの確立に向けた取組を支援し、知的財産制度の法制度・運用整備を促すことは、途上国経済自体の自立的な発展を通じて、世界経済の持続的な成長に寄与するものである。加えて、知的財産制度の確立は、貿易・投資環境の改善につながり、途上国で事業活動を行う我が国企業のビジネスコストを引き下げるだけではなく、対内直接投資の拡大を促進するという観点からも、途上国の発展につながるものである。このような観点から、日本国特許庁は途上国に対して、知的財産権の保護強化及び執行強化の観点から人材育成や情報化等を積極的に支援している。また、途上国においては国ごとに知的財産権の保護水準や我が国との貿易・投資実態が大きく異なるため、協力の実施に当たっては、我が国産業界のニーズを踏まえ、対象国・分野等の優先度を十分吟味するとともに、各国の状況に応じたきめの細かい計画を策定することが不可欠である。本節では、政府開発援助(ODA)のスキームの活用を中心とした我が国の取組について、その概要を紹介する。し、知財を取り巻く各国の環境も変化してきた。今後、知財庁の制度整備・人材育成については引き続き協力しつつ、当該ファンドを通じて、知財が活用される環境を構築していくための協力や優れた地域産品のブランディング化への協力など、開発途上国のニーズに対応した新たな協力を実施する。その一環として、2018年2月にWIPO、日本国特許庁、日本貿易振興機構(JETRO)との間で、「知財と貿易投資の連携枠組」を構築することに合意した。②技術協力プロジェクト1等(独立行政法人国際協力機構(JICA))現在、インドネシアにおいて、「ビジネス環境改善のための知的財産権保護・法的整合性向上プロジェクト」(2015年12月-2020年12月)が実施されており、日本国特許庁から職員1名を長期専門家として派遣するとともに、案件に応じた短期専門家の派遣、研修生の受入れを通じて、知的財産制度整備の支援、人材育成協力、普及啓発活動を行っている。本プロジェクトは、日本国特許庁がこれまで1 技術協力プロジェクトは、専門家の派遣、研修員の受入れ、機材の供与という3つの協力手段(協力ツール)を組み合わせ、 一つのプロジェクトとして一定の期間に実施される事業形態。
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