特許行政年次報告書2018年度版
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グローバルな知的財産環境の整備に向けて第2章特許行政年次報告書2018年版318企業の経済活動のグローバル化の進展に伴い、海外において予見性を持って円滑に権利を取得し得ることが求められている。そのためには、その国の審査官が、十分な審査実務能力を有し、適切な判断ができる能力を備えていることが重要である。特に、インド・ASEAN諸国は我が国企業の事業展開が大いに見込まれることから、これらの国における審査体制の整備・強化への協力に対するニーズが寄せられている。このような中、特許庁では、特許審査の実務経験が豊富な審査官から構成される国際研修指導教官を中心として、インド・ASEANをはじめとする新興国審査官に対する特許審査実務面での協力を行っている。国際研修指導教官は、新興国に対する支援を行い、特許庁が採用するグローバルスタンダードの審査手法等を伝えていくことを目的として、2012年4月から活動を行っている。加えて、2018年4月には、さらなる活動拡大のため、従来の2倍となる28名まで人員を増加させ体制強化を行った。国際研修指導教官の主な業務として、新興国審査官に対する審査実務指導が挙げられる。審査実務指導は、国際研修指導教官が新興国に赴いたり、新興国審査官を日本に招へいしたりすることで、直接顔を合わせての研修を実施している。このように直接交流することを通じて、指導効果を高めるとともに、深い信頼関係を構築している。2017年度は、インド・ASEAN諸国を中心とした新興国計25か国延べ約570名の審査官に対し審査実務指導を行った。特に、2017年度は、2016年度に続き他庁の新人審査官研修への協力に注力した。2016年度には、インド、タイに対して、大規模な新人審査官研修を実施したところ、2017年度は、そのフォローアップとして、約300名のインド新人審査官、約50名のタイ新人審査官を対象とする技術分野別のより実践的な研修を実施し、新人審査官の育成における継続的な協力を進めた。また、ベトナムでは、国際研修指導教官について42016年度のタイと同様に、ベトナムの新人審査官9名を含む審査官約20名に対し、2週間にわたって特許審査実務の基礎を網羅的に指導するとともに、新人審査官の育成などベトナム内部で研修を提供する立場にあるトレーナー候補の審査官に対しても審査の指導方法に関する研修を実施するという、包括的な協力を行った。さらに、フィリピン、マレーシア、インドネシアでは、新人審査官を含む若手審査官を対象に、特定技術分野における審査実務指導を実施した。特許庁は、今後も、国際研修指導教官を中心として、引き続き新興国審査官に対して効果的・効率的な審査実務指導を行い、さらに、特許庁が作成した新興国向け研修テキストの配布やEラーニング教材の拡充と周知を通じて、新興国審査官の審査実務能力の向上と我が国の特許審査実務のより一層の普及を図る。そして、これらの取組により、我が国企業の新興国展開を支援していく。新興国向け研修テキストベトナムの新人審査官向け研修の様子インドの新人審査官向けフォローアップ研修の様子

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