特許行政年次報告書2018年度版
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グローバルな知的財産環境の整備に向けて第2章特許行政年次報告書2018年版320た諸外国に対して協定への参加を促していくことが期待される。②産業界との連携模倣品・海賊版等の海外における知的財産権侵害問題の解決に意欲を有する企業・団体が業種横断的に集まり、産業界の意見を集約するとともに、日本国政府との連携を強化し、個別企業や業界では対処が困難な問題についての官民合同の協力拠点となり、国内外の政府機関等に対し一致協力して行動し知的財産保護の促進に資することを目的として、2002年4月、「国際知的財産保護フォーラム(IIPPF)」が設立され、2018年で16年目を迎えた。IIPPFが官民協力の拠点になることにより、官は日本産業界の現状をしっかりと把握し、それを施策に反映させることができ、民は日本産業界だけでは対処できない他国政府からの提案等についても柔軟な対応が可能になるなど、相互に補完し、海外の知的財産に関する問題についてより有効かつ実効的な対策をとることが可能となっている。特に中国政府との関係では、日中政府間において知的財産に関する協議の場が持てなかった時期においては、IIPPFが官民協力の拠点となり、中国政府との協議の場を切り開き、日中交流を継続した。また、近年、日中政府間において知的財産に関する協議の場が設けられて以降は、日中政府間の協議にIIPPFがオブザーバーとして参加し、それをIIPPFのその後の活動に活かし、他方でIIPPFの活動が日中政府間協議の内容に反映されるなど、日本政府とIIPPFが密接に連携して知的財産保護を推進している。このほか、IIPPFではASEAN諸国をはじめ新興国等の取締機関職員向けの「真贋判定」セミナーの実施等の協力も行っている。日本国特許庁としても、IIPPFの取組を支援しており、特に、中国に関しては、IIPPFと政府が連携して、これまでに8回のハイレベル官民合同ミッションを派遣し、中国政府機関に対して悪意ある商標出願問題、知的財産権に関する判決へのアクセス性の向上、実用いずれも中国が最多であった。次いで韓国、台湾等アジア地域での模倣被害が引き続き深刻な状況となっている。さらに、模倣業者が取締り・摘発から逃れようと、模倣手口の巧妙化も年々進んでいる。このように多様化・複雑化する模倣被害に対処するために、模倣被害対策における働きかけ先や働きかけの方法等を多様化していくことが必要になっている。(2)模倣品問題に対する日本国特許庁の取組①各国政府への働きかけと支援2009年に日中政府間で知的財産保護に関する四つの覚書が交換され、知的財産保護の協力と交流関係の強化が図られている。当該覚書に基づいて中国政府機関との間で具体的な協力の取組が進められており、模倣品問題については日中知的財産権ワーキンググループ等の場で議論が行われてきた。また、途上国における取締りの強化に関しては、毎年、アジア各国の税関、警察、裁判所等の取締機関等職員を研修生として日本に招へいして知的財産権制度に関する研修を実施するとともに、現地においてセミナーを開催することを通じて、各国の取締機関等職員の人材育成を支援している。また、2005年G8サミットにおいて、知的財産権の執行を強化するための新しい国際的な法的枠組みである「偽造品の取引の防止に関する協定(ACTA)」を我が国が提唱し、2011年10月の東京における署名式で我が国を含む8か国がACTAに署名した。ACTAは、模倣品・海賊版対策の実効性を高めるため、WTO/TRIPS協定における執行に関する枠組みを更に発展させたものであり、具体的には、税関の取締対象への輸出の追加、模倣ラベルの取引の違法化、視聴や使用を限定する機能を無効化する機器の取引の違法化等が規定されている。ACTA締約国としては、二国間・複数国間協議等の様々な機会を利用して協定への理解を深めるとともに、アジア地域をはじめとし
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