特許行政年次報告書2018年度版
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特許行政年次報告書2018年版323第3部・国際的な動向と特許庁の取組第1章第2章(1)環太平洋パートナーシップ(TPP)協定2016年2月、TPP協定の署名がなされた。TPP協定で対象となる知的財産は、商標、地理的表示、特許、意匠、著作権、開示されていない情報等である。TPP協定の知的財産章は、これらの知的財産につき、TRIPS協定を上回る水準の保護と、権利行使(民事上及び刑事上の権利行使手続並びに国境措置等)について規定し、知的財産権の保護と利用の推進を図る内容となっている。産業財産権分野の主な規定は以下のとおりである。(特許分野)・特許期間延長制度(出願から5年、審査請求から3年を超過した特許出願の権利化までに生じた不合理な遅滞につき、特許期間の延長を認める制度)の導入の義務付け。・新規性喪失の例外規定(特許出願前に自ら発明を公表した場合等に、その者が公表日から12月以内にした特許出願に係る発明は、その公表によって新規性等が否定されないとする規定)の導入を義務付け。(商標分野)・国際的な商標の一括出願を規定した標章の国際登録を定めるマドリッド協定議定書又は商標出願手続の国際的な制度調和と簡略化を図るための商標法シンガポール条約の締結を義務付け。・商標の不正使用について、法定損害賠償制度又は追加的損害賠償制度を設ける。なお、2017年1月に米国が離脱宣言をした経済連携協定(EPA)・自由貿易協定(FTA)締結の推進6これまで我が国は、経済的にも文化的にも関係の深いアジア諸国を中心にEPAの締結を積極的に行ってきた。こうした中、貿易・投資拡大に資する環境整備の取組の一環として知的財産分野についてもEPA交渉の一分野に含めている。知的財産分野での交渉において、我が国は、相手国との通商関係や知的財産問題の大きさ等を考慮しつつ、(ⅰ)十分、効果的かつ無差別的な知的財産保護、(ⅱ)知的財産保護制度の効率的で透明性のある運用、(ⅲ)十分かつ効果的なエンフォースメント、が確保されることを目指している。我が国はこれまで、16のEPAを発効・署名済みであり、これらのEPAでは、手続の簡素化・透明化、知的財産権の保護強化やエンフォースメントの強化といった内容が盛り込まれており、TRIPS協定の保護水準を上回る知的財産権保護の強化が規定されている。ため、米国以外の参加国11か国は、TPP協定の早期発効に向けた検討を行い、TPP協定のうち一部の項目(医薬品の特許期間延長や、前記の不合理な遅延に基づく特許期間延長等)の凍結を含む環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)に大筋合意した。2018年3月には署名が行われている。(2)交渉妥結済・交渉中のEPA広域・大型の経済連携として、2017年12月、欧州連合との日EU・EPAに交渉妥結したほか、東アジア地域包括的経済連携(RCEP:Regional Comprehensive Economic Partnership)、日中韓FTAの交渉を行っている。また、二国間では、トルコ等とのEPAの締結に向け交渉を行っている。(参考:発効・署名済みのEPA)① 日・シンガポールEPA(2002年11月発効)② 日・メキシコEPA(2005年4月発効)③ 日・マレーシアEPA(2006年7月発効)④ 日・チリEPA(2007年9月発効)⑤ 日・タイEPA(2007年11月発効)⑥ 日・インドネシアEPA(2008年7月発効)⑦ 日・ブルネイEPA(2008年7月発効)⑧ 日・ASEAN包括的EPA(2008年12月から順次発効)⑨ 日・フィリピンEPA(2008年12月発効)⑩ 日・スイスEPA(2009年9月発効)⑪ 日・ベトナムEPA(2009年10月発効)
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