特許行政年次報告書2018年度版
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企業等における知的財産活動第2章特許行政年次報告書2018年版50業種別に見ると、「繊維・パルプ・紙製造業」において利用割合が高く、「業務用機械器具製造業」が続くように、特許権の利用率は業種によって異なっていることが分かる。その中で、いずれの業種においても企業では利用率が34%を超えており、特許権の積極的な実施は業種によらず一定以上なされているといえる。また、「教育・TLO・公的研究機関・公務」については、昨年度より微増しているものの企業と比較して低い傾向にある。外国での利用状況としては、2016年度、利用率48.5%、防衛目的の割合38.4%となっている。我が国の企業等は、外国においても日本と同程度に特許権を利用していることがわかる。(2)特許権の利用状況先述した知的財産活動調査では、知的財産権の利用状況についても明らかにしている。なお、全体推計値については、調査票の回答結果を基に我が国全体について推計を行った数値1であることに留意する必要がある。国内での利用状況としては、2016年度における利用率(利用件数2/所有件数)は49.0%となり、特許権所有件数3の半数程度は自社実施又は他社への実施許諾といった積極的な実施がなされていることが分かる。また、防衛目的4件数の割合は35.7%となっており、これは2009年度から2016年度にかけて見ると増加傾向にあり、企業等による防衛目的の出願や権利保有が増加していることが窺える。う各種費用、販売権の許諾・設定に伴う受払等を計上しており、また、これらの権利に関する技術、経営指導料も含む。この推移から、我が国企業のグローバル化が進展する中、産業財産権を含む知的財産の国際取引は活発化しており、我が国の国際収支にも貢献しているといえる。(1)産業財産権等使用料の国際収支財務省が公表している国際収支統計によると、我が国の産業財産権等使用料の国際収支は、2017年には過去最大の3.2兆円の黒字となった。ここでいう、「産業財産権等使用料」には、産業財産権(特許権、実用新案権、意匠権、商標権)の使用料のほか、ノウハウ(技術情報)の使用料やフランチャイズ加盟に伴知的財産権の利活用の状況21 全体推計値は、母集団を業種別・出願件数階級に層化し、各層の推計元標本についての集計結果を標本数で除し、母集団数を乗じることによって算出した。2 利用件数とは、権利所有件数のうち「自社実施(使用)件数」及び、「他社への実施(使用)許諾件数」のいわゆる積極的な利用件数の合計である。なお、未利用件数とは自社実施も他社への実施許諾も行っていない権利であり、防衛目的権利及び開放可能な権利(相手先企業を問わず、ライセンス契約により他社へ実施許諾が可能な権利)を含む。3 特許権所有件数は、内国人現存権利数の確定値である。「うち利用件数」及び「うち未利用件数」は、知的財産活動調査における全体推計結果より権利利用率を算出し、確定値に乗じることで得ている。4 自社実施も他社への実施許諾も行っていない権利であって、自社事業を防衛するために他社に実施させないことを目的として所有している権利。1-2-12図 産業財産権等使用料(受取・支払)の推移(資料)財務省「国際収支統計」を基に特許庁作成支払(兆円)収支(兆円)受取(兆円)5.04.03.02.01.00-1.0-2.019961997199819992000200120022003200420052006200720082009201020112012201320142015(兆円)20162017(年)
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