特許行政年次報告書 2019年版
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知的財産をめぐる動向第1部第5章特許行政年次報告書2019年版73⑥パワーアシストスーツ パワーアシストスーツは、身体に装着し、装着者又は作業対象に対して作用することで、歩行、立ち上がり、持ち上げといった身体動作の支援や、身体機能の改善・治療等を行うものである。 パワーアシストスーツの日米欧中韓における市場規模(出荷台数ベース)は、2016年に約158,600台であり、今後、年平均成長率約17.1%で拡大していくと予想される[1-5-30図]。 パワーアシストスーツについての日米欧中韓への特許出願は、かつては日本国籍出願人が全体の多数を占めていたが、2010年頃から韓国籍、2012年頃から中国籍出願人の出願が急増している[1-5-31図]。 日本国籍出願人の出願を、出願人の属性別で見てみると、大学・研究機関による単独出願及び大学・研究機関を含む共同出願の比率が共に約10%と大きく、日本における大学・研究機関の寄与が見て取れる[1-5-32図]。 産学官連携をさらに推進し、大学・研究機関が持つ技術や研究成果と、企業の持つ技術や、製造ノウハウとを結び付けて、パワーアシストスーツの産業化を推進していくことが重要である。 各国籍出願人の出願を用途別に見てみると、医療用途が最多であるのは各国籍共通であるが、日本国籍出願人は介護用、産業用、家庭用についても多くの出願を行っているのに対し、米国籍・韓国籍は防衛用途について多くの出願を行っている[1-5-33図]。 アシスト対象部位(上半身)では、日本国籍出願人は腰をアシストするものが最多であるのに対し、米国籍・中国籍は肘、欧州国籍は手・指、韓国籍は腰と肘である。 アシスト対象動作については、歩行アシストについて各国籍いずれも最も多く出願を行っているが、日本国籍出願人は持ち上げ、立つ動作のアシストについても多くの出願を行っている。 このように、各国籍出願人の注力している用途やアシスト対象・動作は一部異なる傾向を示している。 パワーアシストスーツは、用途やニーズに応じて、求められる機能や性能等が大きく異なるものであることから、これらを早期に見定め、特に必要な技術をブラッシュアップしていくことが望まれる。1-5-32図 日本出願人の属性別比率及び共同出願の内訳個人-個人1件 0.8%企業-企業30件 23.1%企業-個人3件 2.3%企業-大学・大学以外の研究機関89件 68.5%大学・大学以外の研究機関-大学・大学以外の研究機関7件 5.4%大学・大学以外の研究機関-個人0件 0.0%(単独出願)企業769件72.3%(単独出願)個人23件2.2%(単独出願)大学・大学以外の研究機関141件13.3%(共同出願)計 130件12.2%合計1,063件合計130件(台)韓国中国欧州日本米国600,000500,000400,000300,000200,000100,0000(年)2025202020161-5-30図 パワーアシストスーツの市場規模推移(対象国:日米欧中韓、出荷台数ベース)1-5-29図 パワーアシストスーツの例(出典):CYBERDYNE株式会社    Prof. Sankai, University of Tsukuba / CYBERDYNE Inc.(資料):特許庁「平成30年度特許出願技術動向調査-パワーアシストスーツ-」(出典):株式会社ATOUN

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