特許行政年次報告書 2019年版
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特許行政年次報告書2019年版84● 国内における金融関連発明の 特許出願・審査の動向 国内のFintechを含む金融関連発明の出願件数(図1)は増加傾向にあり、2017年には1,100件超であった。今後もキャッシュレス決済の普及促進に伴い、金融分野での特許出願の増加が予想される。特許査定率(図2)についても、他の技術分野と同等の6-7割程度で落ち着いている。また、近年では、Fintechサービスを提供する企業間での特許侵害訴訟が注目されるなど、特許の“活用”に関する動きも活発になっている。● 五庁の金融関連発明の動向 五庁における金融関連発明の出願件数(図3)は、全体として増加傾向にある。特に中国、韓国は大きな伸びを示しているが、現状において中国国内での特許登録件数(図4)は、その出願件数に比してさほど目立つ値とはなっていない。また、米国では2014年のAlice最高裁判決の影響で、金融関連発明の特許取得が困難となった状況がグラフ(図4)にも現れているが、近年の登録件数は増加している。 そうした中、日本における金融関連発明の出願規模は上述したように増加傾向であるものの、各国と比較すると相対的に小さい。今後の日本におけるFintechの普及による市場・投資の拡大に基づく、さらなるイノベーションの創出が期待される。(資料)特許庁作成(備考) ・ここではIPCとしてG06Q20/, 40/が付与された出願を「金融関連発明」としている。 ・出願件数は、①国内出願件数と②PCT(Patent Cooperation treaty:特許協力条約)に基づく国際出願のうち日本へ国内移行した出願件数、の合計数。 ・PCT国際出願は、国内書面の受付日を基準日として計上している。 ・特許査定率=特許査定件数/(特許査定件数+拒絶査定件数+FA後取下・放棄件数)Fintechと特許 Fintechは、ファイナンス(Finance)とテクノロジー(Technology)を掛け合わせた造語であり、ICTを用いた様々な金融・決済サービスを指す。例えば、QRコードを用いたキャッシュレス決済や仮想通貨のほか、家計簿アプリ、AIによる投資アドバイザ等のサービスが挙げられる。(資料)WIPO Patentscopeを基に特許庁作成(2019年4月12日検索)(資料)Google Patent Searchを基に特許庁作成(2019年4月12日検索)(出願年)02004006008001,0001,2002017201620152014201320122011201020096616205586547558177441,0681,139(件)01002003004005000%10%20%30%40%50%60%70%特許査定率特許査定件数201420132012201120102009(出願年)(件)(出願年)(件)01,0002,0003,0004,0005,0006,000201620152014201320122011中国(CNIPA)日本(JPO)欧州(EPO)米国(USPTO)韓国(KIPO)(登録年)(件)05001,0001,5002,0002,5003,00020182017201620152014201320122011中国(CNIPA)日本(JPO)欧州(EPO)米国(USPTO)韓国(KIPO)Column 2図1 金融関連発明の特許出願件数図3 各国の金融関連発明の特許出願件数図2 金融関連発明の特許査定件数/率図4 各国の金融関連発明の特許登録件数

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