特許庁における取組第2部第1章特許行政年次報告書2019年版972.スタートアップ支援に関する取組 2018年度、特許庁では、スタートアップ支援の強化に舵を切り、各種施策を打ち出してきた。まずは、目玉施策として、知財に特化したアクセラレーションプログラム(IPAS)を初めて実施した。2018年度は10社の研究開発型スタートアップに対し、3か月間の集中支援を行った。ビジネスモデルのブラッシュアップや、オープンクローズ戦略を含む知財戦略の構築等、各社とも大きな成果を得ることができた。 また、2018年7月からは、スタートアップ向けのスーパー早期審査、面接活用早期審査を開始した。資金調達や他者との提携のために権利化を急ぎたいスタートアップからの利用が増えている。 スタートアップの知財意識の向上のための普及啓発活動も活性化させた。東京を中心に、全国各地でセミナーやイベントを開催し、知財専門家とスタートアップとの出会いの場も提供した。 その他、海外展開を志向する中小企業・スタートアップを支援するジェトロ・イノベーション・プログラム(JIP)や、一定の要件を満たすスタートアップに対し、国内特許出願、PCT国際出願の手数料を軽減する措置を実施した。 2018年度は、まさに特許庁のスタートアップ支援が走り出した年であった。2019年度は、さらに支援を充実させ、日本のイノベーションを知財の面から後押ししていく。3.標準必須特許に関する取組 高速で大容量、かつ多数同時接続という特徴を有する次世代通信規格「5G」は、自動車やスマートホームなどの様々なインフラや機器が、インターネットを通じてつながり合うIoT時代の基盤となるものであり、新たなビジネスの進展が期待されている。 これまでの情報通信分野では、標準規格に関する特許に関して、情報通信企業同士によるクロスライセンス等が行われてきた。しかし、IoTの普及により、情報通信以外の分野の企業も情報通信技術の標準規格を利用する必要性があり、自動車業界、サービス業界も通信技術のライセンス交渉に関わるようになってきていることから、ライセンス交渉の当事者に大きな変化が起きており、当事者間の必須性の判断やライセンス料率の相場観にも乖離が生じている。 そこで、特許庁では、標準必須特許のライセンスに関して、透明性と予見可能性を高め、交渉を円滑化し、紛争の未然防止及び早期解決を図るため、誠実なライセンス交渉の進め方、ロイヤリティ算定をどのように決めるか等の論点を整理した「標準必須特許のライセンス交渉に関する手引き」を2018年6月に公表した。JIPスーパー早期審査IPAS情報発信料金減免スタートアップ2-1-2図 スタートアップ支援次世代通信規格5G自動車スマートホーム情報通信分野情報通信以外の分野本手引きの目的ライセンス交渉の進め方ロイヤルティの算定方法どう交渉すれば?適切な料率とは?「標準必須特許のライセンス交渉に関する手引き」を参照2-1-3図 標準必須特許のライセンス交渉に関する手引き
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