特許行政年次報告書 2019年版
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特許行政年次報告書2019年版104第2章特許における取組 また、「環太平洋パートナーシップ協定の締結及び環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律」により、特許法第67条等が改正され、特許権の設定登録までに一定以上の期間を要した場合に権利期間を補償する、期間補償のための特許権の存続期間の延長の制度が追加された。これに伴い、産業構造審議会の審査基準専門委員会WG第13回会合での検討及び意見募集の結果を踏まえて、審査基準において「期間補償のための特許権の存続期間の延長」に関する章を新設する改訂を行った。改訂後の審査基準は、2020年3月10日以降にした特許出願に係る特許権の存続期間の延長登録の出願の審査に適用される。④新技術に対応した審査基準等の改訂 第四次産業革命と呼ばれる大量のデータとAI(人工知能)を活用する技術革新への期待が高まっている。この状況を踏まえ、AI関連技術の特許出願に対する特許審査の透明性と予見性を高めることと、その特許審査の運用を諸外国に発信することを目的として、AI関連技術に関する特許審査事例を世界に先駆けて整備した。特許審査事例は日本語1及び英語2で公表されている。 具体的には、産業構造審議会の審査基準専門委員会WG第13回会合での検討を経て、AIを様々な技術分野に応用した発明の10の特許審査事例を作成した。特許審査事例はそれぞれAI関連技術の特許出願に対する記載要件及び進歩性についての判断手法を紹介する。2019年1月に、これらの特許審査事例は「特許・実用新案審査ハンドブック」に追加されている。(2)ユーザーニーズに応じた取組①面接 特許庁では、審査官と出願人又はその代理人との間において、円滑な意思疎通を図るとともに、審査の効率化にも資するため、審査請求された出願を対象に面接3を実施している(2018年実績:4,128件)。特許庁の庁舎内で実施する面接のほか、出願人の所在地が東京近郊にない場合に全国各地に審査官が出張し面接を実施する出張面接(2018年実績:1,158件)や、インターネット回線を利用し、参加する場所に制限がなく、出願人や代理人等が自身のPC等から面接に参加するテレビ面接も実施している(2018年実績:155件)。なお、2017年7月に開設した独立行政法人工業所有権情報・研修館近畿統括本部(INPIT-KANSAI)では、毎月第1・第3金曜日に、出張面接を重点的に実施している。②事業戦略対応まとめ審査 近年、企業活動のグローバル化や事業形態の多様化に伴い、企業では事業戦略上、知的財産権を群として取得し活用することが重要になってきている。そこで、特許庁では、事業で活用される知的財産権の包括的な取得を支援するために、国内外の事業に結びつく複数の知的財産(特許・意匠・商標)を対象として、各分野横断的に事業展開の時期に合わせて審査・権利化を行う事業戦略対応まとめ審査4を実施している(2018年実績:45件(対象とされた特許出願は446件、意匠登録出願は2件、商標登録出願は1件))[2-2-6図]。 事業戦略対応まとめ審査では、事業説明・面接等を活用し、事業の背景や、技術間の繋がりを把握した上で審査を行う。また、出願人が希望するタイミングでの権利化を支援するため、事業説明・面接・着手のスケジュールを調整しながら審査を進めることとしている。1 AI関連技術に関する特許審査事例についてhttps://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/ai_jirei.html2 Patent Examination Case Examples pertinent to AI-related technologies https://www.jpo.go.jp/e/system/laws/rule/guideline/patent/ai_jirei_e.html3 面接申込等その他詳細な情報については下記ウェブサイトを参照 https://www.jpo.go.jp/system/patent/shinsa/mensetu/junkai.html4 申請手続等その他詳細な情報については下記ウェブサイトを参照 https://www.jpo.go.jp/system/patent/shinsa/general/matome_sinsa.html1234

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