特許行政年次報告書 2019年版
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特許行政年次報告書2019年版106第2章特許における取組(1)国際的なワークシェアリングのための取組①特許審査ハイウェイ(PPH) 特許審査ハイウェイ(PPH)とは、第一庁(出願人が最先に特許出願をした庁)で特許可能と判断された出願について、出願人の申請により、第一庁とこの取組を実施している第二庁において簡易な手続で早期審査が受けられるようにする枠組みである[2-2-8図]1。 これにより、他庁の先行技術文献調査結果・審査結果の利用を促進し、複数の国・地域での安定した強い特許権の効率的な取得を支援している。 また、PCT国際段階における見解書又は国際予備審査報告で特許可能と判断された見解に基づき、早期審査を申請することができるPCT-PPHという枠組みや[2-2-8図]、どの庁に先に特許3.各国特許庁との連携・協力出願をしたかにかかわらず、いずれかの庁による特許可能との審査結果に基づき他庁へのPPH申請を可能とするPPH MOTTAINAIという枠組みも存在する[2-2-9図]。 PPHを利用することによるメリットは、最初の審査結果及び最終処分までの期間の短縮、オフィスアクションの回数の減少、特許査定率の向上が挙げられるとともに、これらに付随して、中間処理にかかるコストの削減効果も見られる。このようなPPHのメリットを容易に把握可能とするために、日本国特許庁は、各庁におけるPPH対象案件の統計情報等、PPHに関する情報を掲載したPPHポータルサイト2を運営している。 次に、PPH実施庁・利用件数の拡大及び、PPHの利便性向上に向けた日本国特許庁の取組について説明する。 企業の経済活動のグローバル化の進展に伴い、欧米のみならず中国や韓国、さらにはASEANや、中南米、インドを始めとする新興国での知的財産権の確保が急務であり、こうした国々で予見性を持って円滑に権利を取得し得るよう、制度・運用の調和と審査協力の重要性が増している。日本国特許庁は、これまでも特許審査ハイウェイ(PPH)の提唱(2006)や五庁会合等での制度調和の議論の提起等、国際的にも主導的な役割を担ってきた。また、諸外国との審査協力を一層推進する観点から、PPHの拡充を進めるとともに、米国特許商標庁との間では、日米協働調査試行プログラムを、五庁間ではPCT協働調査を実施してきている。さらに、我が国の世界最先端の審査手法を普及させるため、国際審査協力等の取組を着実に実施してきた。本節では、これらの各国特許庁との連携・協力について紹介する。1 典型的な申請書類の例等その他詳細な情報は特許庁ウェブサイトにも掲載している。 https://www.jpo.go.jp/system/patent/shinsa/soki/pph/index.html2 https://www.jpo.go.jp/toppage/pph-portal-j/index.html122-2-8図 特許審査ハイウェイの概要:通常型PPH(上)とPCT-PPH(下)A庁B庁審査PPH申請C庁PCT国際段階PCT国内段階PCT出願特許可能PPH申請早期審査特許性あり早期審査PCT―PPHPCT国際段階の成果物通常型PPH審査特許可能PPH申請出願第一庁第二庁出願パリルート早期審査【PCT国際段階成果物を利用するメリット】 早いタイミングでPPH申請が可能 PCT成果物の最大限の利用見解書/IPER

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