特許行政年次報告書 2019年版
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特許庁における取組第2部特許行政年次報告書2019年版109第2章PPH MOTTAINAI及びPCT-PPHの全てが相互に利用可能となり、欧中、欧韓の間で新たにPPHが開始された。 日本国特許庁は、更なるユーザーの利便性向上に向けて、PPHによる審査待ち期間短縮等の効果を客観的に把握可能となるようにPPH統計情報の公開を提案するとともに、統計情報を公開する際に統一的な指標を設定すべく五庁の議論をリードしている。 将来的には、通常型PPH、PPH MOTTAINAI、PCT-PPHを含むすべてのPPHの枠組みを各庁との間で相互に利用可能としてユーザーの戦略的権利取得のための選択肢を広げるとともに、わかりやすい手続とすることによる利便性向上が期待される。c. PPHの実効性向上に向けた取組 PPH案件の審査の遅延解消がユーザーより要望されていたインドネシア知的財産総局においてはPPH案件の迅速な審査が可能となるよう、2016年6月以降日本からPPH専門家をのべ14名派遣して継続的な支援を行っており、これにより、支援開始前の3年間では、PPH申請がなされた出願のうち審査が行われた案件が約30件であったのに対し、支援開始以降の2年半で600件以上の案件が特許査定となっている。 また、日本からの年間のPPH申請可能件数に上限が設定されているベトナム、日本からPPH申請可能な技術分野に制限等があるブラジルについても、相手庁との会合の場を利用して要件緩和に向けて働きかけを行ってきた。これらの働きかけの結果、ベトナムについては、2019年4月より申請可能件数の上限が、従来の年間100件から年間200件に引き上げられている。また、ブラジルについても2019年4月より、対象技術分野が従前のIT分野及び自動車関連技術を中心とした機械分野に加え、高分子化学、冶金、材料、農芸化学、微生物、酵素などにも拡大された。 今後もPPHを実施しているものの、その利用に際して不便な点が残る外国特許庁に対しては継続的に支援・働きかけを行うことで、PPHがより実効性のある枠組みとなることが期待される。②日米協働調査試行プログラム 日米協働調査試行プログラム1は、日米両国に特許出願した発明について、日米の特許審査官がそれぞれ先行技術文献調査を実施し、その調査結果及び見解を共有した後に、それぞれの特許審査官が最初の審査結果を送付する取組であり、米国特許商標庁との間で2015年8月1日から試行を行っている[2-2-12図]。 この取組により、「日米の審査官が早期かつ同時期に審査結果を送付することで、ユーザーにとっての審査・権利取得の時期に関する予見性が向上する」、「日米の審査官が互いに同じ内容の一群の出願について先行技術文献調査を協働して実施することにより、より強く安定した権利をユー1 申請手続等その他詳細な情報は下記ウェブサイト参照 https://www.jpo.go.jp/system/patent/shinsa/general/nichibei.html12-2-12図 日米協働調査試行プログラムの概要1. 日米協働調査の申請 2. 両庁によるサーチ結果・見解の共有3. 同時期に最初の審査結果をそれぞれ送付対応する出願先行技術文献調査・特許性の判断特許性の判断について再検討最初の 審査結果先行技術文献調査・特許性の判断特許性の判断について再検討最初の審査結果

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