特許庁における取組第2部特許行政年次報告書2019年版111第2章③PCT協働調査 PCT協働調査は、PCT国際出願における質の高い成果物を作成することを目的として、一つのPCT出願について、主担当の特許庁が副担当の特許庁と協働して、特許可能性に関する判断を行い、最終的に一つの国際調査報告を作成し、出願人に提供するものである[2-2-14図]。PCT協働調査により、国際段階で複数庁の調査結果が得られるため、海外での円滑な特許権取得が可能となることが期待される。 2018年7月1日より、五庁による2年間の試行プログラムが開始され、各庁は年間50件を上限として、申請の受付を行っている。当初は英語出願のみを対象としていたものの、各庁英語以外の言語にも対象を拡大しており、日本国特許庁への申請についても日本語PCT出願についてPCT協働調査への参加申請が可能となっている(2019年4月1日時点)。 2年間の試行期間終了後に、各庁が協働したことによる効果について評価が行われ、本格施行の可能性について検討される予定である。(3)国際的な特許制度の調和に向けた取組①国際審査協力 経済活動のグローバル化に伴う、同一又は類似の発明が国をまたいで複数の庁に出願されるケースの増加、特許審査ハイウェイの拡大、特許庁間の情報ネットワークの発達等により、他庁の審査結果を日本国特許庁の審査官が利用する機会や、日本の審査結果が他庁の審査官に参照される機会は増加の一途をたどっている。国際審査協力は、このような状況の中、先行技術文献調査及び審査実務の相互理解に基づく特許審査のワークシェアリングの促進、日本国特許庁の審査実務・審査結果の他庁への普及、質の高いレベルでの審査の調和、特許分類の調和、日本国特許庁の施策の推進等を目的として、各国特許庁の審査官との直接の議論や、審査実務指導を行う取組である。2000年4月から2019年3月末までの累積で、短期又は中長期の派遣・受入れを29の知財庁・組織と行っている[2-2-15図]。 2018年度は、日本国特許庁の審査官のべ25名を派遣するとともに、各国・地域の特許庁審査官14名を受け入れた。 特に、中国との協議においては、日中両庁の品質管理担当者の間で品質管理に関する協議を2017年度に続き実施し、中国の品質管理体制などに対する理解を深めた。加えて、ASEAN諸国等の新興国に対しては、日本国特許庁の審査官派遣及び招へい研修を実施して、のべ293名の審査官に審査実務指導を行い1、当該国での適切な知的財産制度の整備や人材の育成の促進に取り組んだ。2019年度も、これらの国・地域に対する派遣、受入れを引き続き行い、日本国特許庁の審査実務・審査結果の普及に一層注力する。1 第3部第2章4.参照。2-2-14図 PCT協働調査のワークフロー副担当庁協働調査結果(WIPO Patentscopeに公開)1庁のみの調査報告 副担当庁の調査結果を踏まえた調査結果※必ずしも五庁全体の見解を反映したものではない
元のページ ../index.html#141