特許行政年次報告書2019年版120第3章意匠における取組(1)意匠制度の活用の促進:「事例から学ぶ意匠制度活用ガイド」の発行 特許庁は、意匠制度の活用方法を具体的な事例を基に紹介した冊子「事例から学ぶ 意匠制度活用ガイド」を作成し、2017年7月に発行した。 本ガイドでは「意匠権に期待される効果」を切り口に事例を紹介している。意匠権に期待される代表的な効果としては、他社に模倣されないようにする効果や模倣品を排除する効果が挙げられる。他方、実際には、大企業、中小企業、デザイナー、大学・研究機関など様々な立場の意匠制度ユーザーが自身のビジネスなどの目的に応じ、意匠権の多様な効果に期待して意匠制度の活用を試みている。 例えば、意匠権に期待される効果を対象者・対象機関別に見ると、「ビジネスを守る効果」、「ビジネスを発展させる効果」、「組織を発展させる効果」に大きく分けることができる[2-3-3図]。 このうち、「ビジネスを守る効果」には、登録意匠の公開、登録された事実の積極的な周知による他者へのけん制(対:ライバル企業等)、意匠権に基づく警告、税関での意匠権侵害物品の輸入差止め、裁判所での紛争処理による模倣品・類似品の排除(対:模倣品メーカー等)、日本で意匠権を取得した事実のアピールによる外国での審査・紛争時の優位性獲得(対:外国の特許庁・裁判所等)などが含まれる。 また、「ビジネスを発展させる効果」には、デザインのオリジナリティの証明やデザイン力のアピールによる信頼性の向上(対:取引先企業、顧客等)、他者へのライセンス、投資家・金融機関等へのアピールによるビジネス機会の拡大(対:取引先企業、投資家、金融機関等)などが含まれる。 そして、「組織を発展させる効果」には、デザインの創作者名の意匠公報への掲載や創作者への社内報奨による創作意欲の向上(対:創作者、社員等)などが含まれる。 本ガイドは、特許庁ウェブサイトに掲載されているとともに、冊子版の配布も行っている。詳細はウェブサイト1を確認されたい。4.デザイン・意匠制度の活用の促進1 https://www.jpo.go.jp/system/design/gaiyo/info/2907_jirei_katsuyou.html12-3-3図 意匠権に期待される効果の例ビジネスを守る外国の特許庁・裁判所など模倣品・類似品メーカーなど裁判所・税関など取引先企業など顧客(生活者)創作者・社員ライバル企業、模倣品・類似品メーカーなど●外国での審査・紛争時の優位性獲得・無審査国での紛争処理・審査遅延官庁へのアピール●他者へのけん制・意匠公報の発行・登録意匠の周知●信頼性の向上・オリジナリティの証明・デザイン力のアピール●ビジネス機会の拡大・ライセンス機会の創出・投資家、金融機関等へのアピール●創作意欲の向上・真の創作者の証明・創作者への社内報奨●模倣品・類似品の排除・警告・税関での輸入差止め・裁判所での紛争処理協力企業、投資家、金融機関などビジネスを発展させる組織を活性化させる
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