特許行政年次報告書 2019年版
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特許行政年次報告書2019年版xiii 平成の歴史は、そのまま情報通信(IT)化の歴史―。そう言っていいほどに、この時代は、急速にコンピューターやネットワーク技術は進化を遂げた。なかでも、今や老若男女に必須のコミュニケーション・ツールとなった携帯電話機やスマートフォンの爆発的な普及は、まさに平成を代表する最も大きな出来事だったといっても良い。 NTTが、日本で初めて携帯電話サービスを開始したのが1987年(昭和62年)のこと。実はその前から、自動車電話サービスとして、アナログ方式による第1世代移動通信システムをベースとした無線通信サービスを同社はすでに展開していた。しかしこの自動車電話サービスが始まった79年、その端末は重量7kgの無線機を社内のトランクに設置すると言うもので、とても「携帯」電話と言えるものではなかった。だが、85年に重量3kgの肩掛け型の電話機「ショルダーホン」を開発して自動車から外に持ち運びができるようになり、さらに87年のサービス開始時には、重量が900gとなった携帯電話1号機「TZ-802型」が登場する。普及初期は小型化の歴史 初期の携帯電話機の普及の歴史は、そのまま小型化の歴史と等しい。まず、携帯電話機が爆発的な普及を遂げるきっかけとなったのが、1991年4月にNTTが発売した「mova」(ムーバ)と呼ぶ超小型の携帯電話機である。 ムーバは、NECと富士通、三菱電機、松下通信工業(現パナソニック モバイルコミュニケーションズ)の4社がNTTと共同開発した端末。いずれも体積約150cc、重さ約230gで、当時は世界最小・最軽量を実現した。これまで、「レンガ」や「かまぼこ」と呼ばれ、厚みがあり武骨だった携帯電話を、ポケットに入れて持ち運べるほどにまでの小型化・軽量化を実現した端末を開発したのだ。 この携帯電話機に、発売日前に5万台の申し込みが殺到。メーカーの供給体制が追い付かず、発売時期を延期するなど、大きな反響を巻き起こした。 その後もメーカー各社は端末の小型化・軽量化にまい進する。通信モジュールやバッテリーの小型化、チップの高密度集積化をはじめとする実装技術の進化、そしてきょう体の素材開発・加工技術で次々に進化を生み出し、2007年にはNECが、折りたたんだ状態で厚さ11.4㎜という驚異的な薄さの二つ折りの携帯電話機「N703iμ」を発売してヒットを飛ばすなど、日本の携帯電話機は、このころに絶頂期を迎えていた。 小型化を含む開発技術の進化に伴い携帯電話の設計の自由度が増し、また各社の競争が激化した結果、携帯電話には高いデザイン性が求められるようになった。前述のような薄さだけではない。例えば携帯電話機メーカーやヒンジ専業のメー携帯普及のきっかけとなった「mova」シリーズ(写真:NTTドコモ)携帯電話機編3知財の視点から振り返る平成という時代冒頭特集

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