特許行政年次報告書2019年版xivカーが、多軸式などの回転方法を編み出し、独特のヒンジ構造を発明し多数の特許を取得。また、各社が先行してデザインを意匠登録して、自社のデザインを保護すると同時に他社に対するけん制をデザイン面から行うなど、知財を活用した神経戦を繰り広げていた。 こうしたデザイン競争の中で、auの発売した「INFOBAR」など、世界的なデザイナーが外装設計を行った携帯電話機が次々と発表され、携帯電話機市場は一層華やいだものとなった。携帯文化を支えた通信の高速化 携帯電話機の爆発的な普及を支えたもう1つの技術が、通信システムの進化だ。1993年(平成5年)に、デジタル方式による第2世代移動通信システム(2G)である「デジタルmova」が採用された。これにより携帯電話機からメールやメッセージサービス、ウェブ閲覧などが可能になった。そして、この技術基盤がNTTドコモによって1999年にサービスが開始された世界初の携帯電話機向けIP接続サービス「iモード」につながった。 携帯電話からインターネット上の任意のWebサーバーにアクセスできるようになり、銀行預金の残高照会や振り込み、航空券やホテルの予約といったサービスが展開できるようになった。また、企業ユーザーにも商品の受発注管理やグループウエア連携などで業務への活用を促すなど、携帯電話の新しい利用シーンを提示した。携帯電話機は、ただの電話から情報端末へと進化し、利用がさらに広がったのだ。実際、iモードの契約数は爆発的に増え、契約数は約1年後の2000年2月14日に400万を突破すると、その約半年後の8月6日には1000万を達成した。 携帯電話機の通信技術の進化は続き、2001年(平成13年)に第3世代移動通信システム(3G)の時代に突入する。第2世代の通信速度が数kbpsだったのに対して、3Gは数百kbps。100倍近い情報量の通信が可能になった。NTTドコモはFOMAと呼ぶ3Gサービスを世界で初めて開始する。 これを発端に、通信速度をめぐる進化が急激に起こり始めた。03年には、KDDI(au)が3.5世代と称される「CDMA 1X WIN」サービスをスタート。データ通信速度が14Mbpsという大容量通信サービスを開始し、同時に音楽配信をする「着うた」やさまざまなゲームが楽しめるゲーム「EZアプリ」など、携帯電話機を通じて楽しめるコンテンツの充実を図り、携帯電話で楽しめる娯楽文化を作り上げていった。 そして通信キャリア各社は2010年から2012年にかけて、LTE(Long Term Evolution)と呼ばれる3.9世代に移行した。2019年現在は、最深澤直人氏のデザインが話題となった「INFOBAR」(写真:KDDI)冒頭特集
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