特許行政年次報告書 2019年版
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特許行政年次報告書2019年版162第8章多様なユーザーへの支援・施策(1)戦略的知的財産活用型中小企業海外展開支援事業 人材、資金、情報等が不足する中小企業にとっては、高い技術を有していても、海外展開に踏み切ることは容易ではない。また、中小企業がグローバルニッチトップを目指すためには、経営戦略、技術・研究開発戦略、知的財産戦略などを総合的に立案・実行していくことが必要である。 そこで特許庁では、2019年度から、高い技術力を有する中小企業の海外展開を戦略的に支援するため、PCT国際出願を予定している中小企業に対し、中小企業基盤整備機構(中小機構)を通じて、3年間にわたり、専門家によるコンサルティング支援を行うとともに、PCT国際出願に係る費用の1/2を助成する予定である。(2)地域知財活性化行動計画の実施 2018年6月に策定された「知的財産推進計画2018」では、「地方・中小企業・農業分野の知財戦略強化支援」を重要課題として掲げるなど、中小企業による知的財産の積極的な活用を支援していくことは、地方創生の観点から重要である。 特許庁では、2016年9月の産業構造審議会第9回知的財産分科会での議論を経て、「地域知財活性化行動計画」を策定した。同計画では、(ⅰ)着実な地域・中小企業支援の実施、(ⅱ)地域・中小企業の支援体制の構築、(ⅲ)成果目標2.中小企業への支援(KPI)の設定とPDCAサイクルの確立という3つの基本方針に則り、地域・中小企業による知財の取得・活用の促進により、中小企業のイノベーション創出を支援することを目指している。 なお本計画の成果目標(KPI)では、知財総合支援窓口における相談件数や専門人材による支援件数等が全国レベルで設定されており、さらに2017年12月に、各地域・中小企業に対する支援施策をよりきめ細やかに実施するため、「都道府県の特色を踏まえた平成31年度までの目標」がとりまとめられている。 これらの全国レベルおよび地域レベルで設定した、成果目標(KPI)の達成に向け、2018年には、同計画に基づき、4月に東京で、10月から11月にかけては地域ブロックごとに、関係者を集めた連絡会議を開催、地域における知財の取組状況や先進的な優れた先進事例について情報共有を行うなどの取組が行われた。 2017年6月に閣議決定された「未来投資戦略2017」でも、同計画に基づき、地域の中堅・中小企業の知財戦略の強化を促進することとされており、同計画に基づく成果目標と「都道府県の特色を踏まえた平成31年度までの目標」を指標とし、各都道府県や地域の関係機関と一体となって取り組むことで、地域・中小企業支援のより一層の充実を図っていく。 我が国の中小企業は、全企業数の99.7%を占め、日本の産業競争力やイノベーションの源泉として大きな役割を果たすとともに、地域の雇用を支える日本経済にとって欠かすことのできない重要な存在となっている。 しかしながら、中小企業における知財活動は穏やかな進展をみせているものの、例えば、特許出願件数に占める中小企業の出願の割合は約15%にとどまっており、企業数からみても、一層の加速が必要である。 このため、中小企業に対し、知財の意識を高め、知財の取得・活用を促進することにより、中小企業のイノベーションの創出を支援し、地域の活性化へとつなげるためにも、中小企業への支援施策の充実を図っているところである。 本節では、特許庁の中小企業向けの支援施策について紹介する。

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