特許行政年次報告書2019年版166● 数値から見た知財金融 5年間で210の金融機関2が、本事業を通じて779件の知財ビジネス評価を実施した。金融機関の業態別に見ると、地域銀行の約8割、信用金庫の約4割、信用組合の1割強に知財金融は広がっており、特に地域銀行での浸透が顕著である。アウトカムの一つと言える融資実績は、44億円ほどに至っている[下図]。● 金融機関・中小企業の声①金融機関における知財金融 金融機関における知財金融の取組は様々だが、取引先企業とのコミュニケーションの深化を入り口として、与信判断・本業支援への活用可能性の検討と実践、組織内での横展開、事業性評価スキームへの反映の流れを経ることが多い。知財ビジネス評価の活用結果として、例えば以下の声が聞かれた。(1)与信判断への活用 ・従来対応困難な資金需要にも対応が可能となり、取引先の成長を支援することができた。 ・案件審査における定性評価の参考情報として評価書を活用し、プラスの評価に繋げることができた。「知財金融」の広がり~5年間を振り返って~ 中小企業知財金融促進事業は、試行を含め5年間実施してきた。事業開始当初は知財金融に関心を示す金融機関は少なく、2014年度に一次公募を行った際は僅か3機関からの応募であった。そこから、徐々に知財金融の考え方が浸透し、地域銀行を中心に本事業に参加する金融機関が増加していった。知財金融の金融機関への広がり(成果)は、知財金融委員会(委員長 家森信善神戸大学教授)でとりまとめた「最終とりまとめ」1が詳しいが、このコラムでは、①定量的な観点として、数値から見た知財金融、②定性的な観点として、金融機関・中小企業からの声、③事業成果の報告会である知財金融フォーラムの開催結果から紹介する。Column 81 中小企業知財金融促進事業「最終取りまとめ」(2019年3月)は、知財金融ポータルサイト(https://chizai-kinyu.go.jp/)で公表している。2 2019年4月末現在で、金融機関合併等を反映させた金融機関数。知財ビジネス評価を実施した金融機関の実数は214機関。なお、「最終とりまとめ」では実数を掲載している。1図 数値から見た「知財金融」
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