特許行政年次報告書2019年版178● 当事者のプロフィール ・学校法人川崎学園 川崎医科大学(岡山県倉敷市) 1970年開学、医科大学・医療福祉大学・短期大学・リハビリテーション学院・付属高校、等を擁する総合医療教育機関かつ附属病院・総合医療センターを擁する地域医療拠点 →https://www.kawasaki-m.ac.jp/med/ ・株式会社メディカルユーアンドエイ(大阪府大阪市) 外科領域に強い医療機器の製造・販売、開業開設に関するコンサルティング等、漏斗胸手術用インプラント販売の国内最大手 →https://www.mua.co.jp/○プロジェクトの概要 川崎医科大学小児外科と(株)高山医療機械製作所が協力して開発した「改善された漏斗胸矯正具スタビライザー」の実用化を図ることを目標として開発を進めてきた(バーの使用が1本と2本のそれぞれの患者向けに2種類の製品が対象)。プロジェクト発足の2016年4月時点では第一次試作品が作成された段階だったが、問題点の改良・工夫が順調に進み、2018年3月に(株)メディカルユーアンドエイからPMDA申請、同8月に承認、同11月に保険収載され、翌月より臨床に供することが可能となった。今後は、非対称変形、部分変形患者(形成外科領域患者を含む)に対応した矯正用具と手術方法の開発を進めていく計画である。○川崎医科大学の技術シーズ 川崎医科大学小児外科は漏斗胸患者の矯正手術の年間施術数が100例に及ぶ、国内で最も症例の多い病院ネットワークの一つである。多数の手術に携わってきた臨床医が実感する既存品の課題・使いにくい点等の解決のために、臨床医と術具の納入企業との間で器具使用上の改良検討を始め、脳外科術具で著名な(株)高山医療機械製作所と試作品を作成して技術的検討を進めてきた。○事業化に向けての課題 技術面では、第1次試作品で大学にて模擬的な臨床使用検討を行った結果、1本用は良好であったが2本用は種々不具合が生じることが分かった。 事業化面では、当初から共同で開発していた(株)高山医療機械製作所ではPMDAへの承認申請や販売対応ができないという問題があった。また、販売、製造、臨床実証の三者が円滑に良好な関係を保って開発を進めていく必要があった。○産学連携知的財産アドバイザーのソリューション 技術面では、改良すべき点を抽出した上でバーの固定方法の考え方を変更し、片側:面接触、反対側:点接触、バー間隔をプリセット方式としたことで課題が解決され、最終仕様品の作成に進んだ。これらの仕様をすべて盛り込んだ特許を1件にして出願1した。 事業化面では、(株)メディカルユーアンドエイを製造販売業者・開発の主導者とし、PMDA承認申請、セカンドサプライヤー候補の起用、米国への販売計画等、事業化計画の練り直しを進めてきた。その際、大学側の視点だけでなく、パートナー企業側の立場での課題克服に向けた対応や情報収集を進めてきた。主な内容は次のようなものである。①ビジネスモデルの確認・検討、②パートナー企業(製造・販売)選定・確認、③セカンドサプライヤー(製造)の必要性・選定、産学連携知的財産アドバイザーの支援成果事例~学校法人川崎学園 川崎医科大学/株式会社メディカルユーアンドエイ~Column 111 「漏斗胸矯正バーの固定具および漏斗胸矯正装置」PCT/JP2017/46027(優先日:2017年1月5日)
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