特許行政年次報告書 2019年版
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特許行政年次報告書2019年版182第8章多様なユーザーへの支援・施策(3)事業プロデューサー 我が国の地方には、地理的条件、人口構造、産業構造等の独特の状況に付随した地方特有の社会課題が存在する。これらの課題に対し、事業ニーズ起点で知財シーズ・技術開発力を組合せて事業化構想を行うことができれば、新規事業創出に繋がるといえる。 しかし、各地方では、保有するシーズを活用して新規事業創出に成功している事例が必ずしも多いとはいえない現状にある。その大きな理由の一つとして、潜在的な市場・ニーズを察知しつつ、知財・技術を理解し、魅力あるビジネスモデルをつくり、そして新規事業創出のできる事業化支援人材が各地方に欠乏していることが挙げられる。 したがって、知財の需要と供給を繋ぎ、事業化を構想できる目利き機能を果たす能力を持った専門家を地方に配置し、新規事業創出を活性化することが必要である。 こうした背景のもと、特許庁では、地域における事業化機能拡充のため、金融機関を含む地域ネットワークを構築・活用しながら、潜在的なニーズ・シーズを掘り起こして事業を構想し、ニーズとシーズのマッチングから事業資金調達、販路開拓まで含めた事業創出環境活動を支援する新規事業創出の専門人材「事業プロデューサー」の派遣を行うことによって、地域における事業化創出機能の活性化を図ることを目的とした、「地方創生のための事業プロデューサー派遣事業」を2016年度より3か年の事業として実施した[2-8-9図]。 具体的には、有識者委員会の議論を経て選定された、(一社)さいしんコラボ産学官、(公財)静岡県産業振興財団、(公財)北九州産業学術推進機構の3機関に事業プロデューサーを派遣し、潜在ニーズ及びシーズの掘り起こし支援、地域ニーズに基づいた新規事業構想支援、成功事例・失敗事例の収集・分析等の活動を通じて、新規事業プロデュース活動のノウハウを派遣先の地域ネットワークへ提供する取組を行った。 上記の取組を通じて、派遣先において事業プロデューサーの役割を担う人材が育ち、事業終了後においても、自律的に事業プロデュース活動が継続される環境の形成につなげた。そして、今後は、成功事例・失敗事例の分析によって得られたモデルを、広く派遣先以外の地方にも周知し、事業プロデューサーの活動を地方においても定着させていく。2-8-9図 事業プロデューサー派遣事業の概要ABC

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