特許行政年次報告書2019年版190第8章多様なユーザーへの支援・施策6.全般的な支援・施策(1)情報の提供による支援①特許情報の提供a.特許情報とは 「特許情報1」とは、特許、実用新案、意匠、商標の出願や権利化に伴って生み出される情報である。企業や研究機関等は、特許情報を有効に活用することで、最先端の技術開発動向や市場動向等を把握し、研究開発の重複防止、既存技術を活用した研究開発の推進、無用な紛争の回避等を図ることができる。このように、特許情報の有効活用は、知的財産の創造、保護及び活用を図る知的創造サイクルにおいて重要なことである[2-8-13図]。特に、特許の出願や権利化に伴って生み出される特許公報等の情報は、特許情報の中心であり、以下に示す技術情報と権利情報の両面を有している。・技術情報 企業、大学、研究機関等から出願された発明は、一定期間経過後に公報により一般に公開される。当該公報には、発明の技術的特徴に基づき、世界共通の体系である国際特許分類(IPC)や我が国独自の細分化された体系であるFI、Fターム等の分類記号が付与されている。これらの分類記号を利用して検索することにより、特定分野の技術情報を効率的に抽出することができる。・権利情報 発行された公報には、既に取得された又は今後取得される可能性のある権利範囲が明示されており、当該権利情報を把握することにより、競合相手の動向を踏まえた研究開発や技術提携が可能となる。 ユーザーは、特許庁、独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)、民間の特許情報サービス提供事業者2、海外特許庁が提供する特許情報提供サービスを通じて、国内外の特許情報を活用している[2-8-14図]。 特許庁又はINPITが運営する特許情報提供サービスに関しては、2016年5月に公表された情報普及活用小委員会の報告書3において、グローバル化に対応しつつ、IT技術の進展、海外庁及び民間のサービスの状況、中小企業や個人を含む我が国ユーザーの要望を踏まえた上で、ユーザーが享受するサービスの質が世界最高水準となるよう、特許情報普及のための基盤を引き続き整備していくべきとの方向性が示された。特許庁及びINPITはこの方向性に沿って、特許情報の提供に関する取組を進めている。研究開発技術動向調査技術参考調査◎技術レベルの把握(過去の存在技術、今後開発すべき技術の参考→技術変化、商品需要予測)◎無駄な研究、重複研究の回避(研究開発投資の効率化、技術導入・共同研究先の可能性検討)◎発明の手がかり(特許網の隙間、代替技術の検討、課題に直面した場合の解決手段を探る)他社権利調査侵害警告公知例調査◎他人の権利阻止、無効化(他社権利の出願前の公知例調査)出願前・審査請求前調査設計製造前発明創出◎無駄な経費の抑制(権利化見込みのない発明に要する審査請求料や外国出願等の経費の抑制)◎明細書作成の参考、先行技術文献開示の義務化への対応◎他社権利との抵触関係調査(侵害の未然防止)◎他社からの技術導入・技術提携の検討監視企業動向調査◎競合会社の出願動向の把握(技術開発動向の把握、自社の障害となる出願の早期発見と今後の対応策の検討等)(定期的に監視)特許情報創造保護活用重複投資の防止イノベーションの推進ライセンスの検討事業戦略の検討紛争の回避無駄な出願の防止権利化戦略の検討(資料)特許庁作成1 「産業財産権情報」又は「知的財産権情報」と称される場合もある。2 国内には、特許情報サービスを提供する大小の様々な民間事業者が存在し、その数は250を超える。3 https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyo-kouzou/shousai/jouhouhukyu-shoi/h28houkokusho.html32-8-13図 特許情報と知的創造サイクル
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