特許行政年次報告書 2019年版
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特許行政年次報告書2019年版218第9章人材育成に向けた支援・施策(2)知的財産権制度活用優良企業等表彰①経済産業大臣表彰受賞のポイント■短期間に複数の薬の候補物質を容易に発見できるようにすることで新薬の開発コストを大きく抑制することを可能とし、3つの独自技術を柱とする特殊ペプチドを用いた創薬のためのプラットフォーム(PDPS)を確立している。PDPSの基本技術や関連技術を複数のコア特許で抑え、さらに各種ライブラリーの発明に関する特許で取り囲み、特許ポートフォリオを構築して強固な参入障壁を構築している。■バイオや製薬業界では契約締結時に知財について厳しい審査が行われる傾向があり、少しでも特許に穴がみつかると大幅にディスカウントされてしまうため、完璧といえるまでにポートフォリオを固めてから交渉を開始している。PDPSのもたらす効果の大きさから世界のメガファーマのほとんどを含む19社の製薬企業とアライアンス契約を締結することに成功している。■アライアンス契約は、契約時の一時金に加え、開発の節目ごとにマイルストーン収入が入るようにし、市場で販売を開始した場合は売上の一定割合のロイヤリティ収入が入る形態として、投資期間が長期に及ぶ創薬事業で、早期に安定した経営を実現している。また、PDPSを継続的にバージョンアップする研究を重ねて、その成果も特許権を取得することで特許ポートフォリオを着実に強化し、競争力を確保している。ペプチドリーム株式会社(神奈川県) ペプチドリーム株式会社は、基盤技術PDPS(Peptide Discovery Platform System)をもとに、特殊ペプチド医薬品やペプチド-薬物複合体(PDC医薬品)、低分子医薬品という3カテゴリーの新規治療薬の開発、技術供与を行っている企業である。知財活用企業(特許)企業担当者による知財活動の紹介 創業者である東京大学の菅裕明教授は、大学発ベンチャーの成功例が多い米国における起業ノウハウや知的財産権に関する知見を有し、窪田規一(現 代表取締役会長)はバイオ分野でベンチャー企業を立ち上げるなどの豊富なビジネス経験を有しており、両者が約1年かけて事業計画や知的財産権のポートフォリオなどを綿密に検討し2006年7月に当社を設立した。当社は知財戦略を事業戦略に不可欠なものと捉え、知財担当者を経営直下に配置しています。 2017年8月に新本社・研究所が稼働して以降は、知財担当者を増員し、体制の更なる強化を図っています。PDPSやその改良技術などプラットフォーム技術に関する方法特許や、得られた新規治療薬原体に関する物質特許だけではなく、効率的に原体を生産する技術の特許も積極的に取得しているため、それぞれに最適な特許の取得及び活用方法について、社長を含めた経営層と知財担当部門で随時議論し、方針を決定しています。 また、将来のビジネスを見据えた適切な知財戦略を構築するため、研究開発のスタート段階から技術担当者、知財担当者及び事業担当者が積極的に会議に参加しています。 さらに社内ウェブ会議ツールなどを導入することで常に担当者間で情報を共有できるようにしています。創薬開発プラットフォームシステム:PDPSの技術体系PDPSから見い出されたヒットペプチドを基に3タイプの創薬開発を推進(Peptide Discovery Platform System )PDPSFlexizyme技術特殊ペプチドを創製する技術FIT systemライブラリー化する技術RAPID display system高速スクリーニングする技術特殊ペプチド医薬品PDPSを用いた創薬開発バリュエーション低分子医薬品PDC医薬品PDPSにより同定されたヒットペプチド

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