特許行政年次報告書 2019年版
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特許行政年次報告書2019年版220第9章人材育成に向けた支援・施策受賞のポイント■地域団体商標の出願に伴い、11(現在は12)項目からなる独自の品質基準を2007年に策定し、その一つとして、日本タオル検査協会が定めた基準より厳しい、タオル片を水に浮かべて5秒以内に沈み始める「5秒ルール」を制定している(同協会ルールは60秒)。また、商標使用や違反時の対応を明確化したブランドマニュアルを2010年に策定し、HP等において公開している。さらに、ロゴマークを作成して商標登録し、品質保証マークとして機能させている。■ブランディング初期には、ロゴマークの認知度を高めるために、あえて各社の織りネームの縫い付け位置を制限し、ロゴマークを目立つように販売して、今治タオルの信用を獲得した。その後は、各社の織りネームの縫い付け位置制限を緩和し、各社の高い技術のこだわりも注目されて、各社のブランド確立を目指している。■ブランドイメージを守るため、バーゲン等で割引販売する際には、広告に今治タオルの文字やロゴマークの使用を禁止して、イメージを損なわないように工夫している。また、タオルソムリエ資格試験制度、タオルマイスター認定制度を設け、「タオルソムリエ」、「タオルマイスター」との名称を商標登録している。これらの制度により、販売力の強化や、「タオル」の魅力を発信する人材の確保を進めている。企業担当者による知財活動の紹介 今治タオル産地が存亡の危機にさらされていた2006年、“世界に通用する”産地イメージの確立に向けて今治タオルプロジェクトを立ち上げ、同年8月には「今治タオル」を地域団体商標出願。2007年2月に品質保証も兼ねるロゴマークを発表して消費者とコミュニケーションするアイコンを確立したほか、同年7月には地域団体商標が登録され、「今治タオル」の定義も厳密化できました。 これらをベースに、組合が独自の品質基準(12項目)やブランドマニュアルに則った徹底的な品質管理を行うことで「今治タオル=高品質」というブランドイメージ定着に繋がりました。地域団体商標が組合内のまとまりを生み、一致団結してブランド価値を高める要素となっており、2018年12月調査では今治タオルの全国認知度は88%にまで向上しています。 一方、認知度の高い商標となったことで中国の第三者による冒認商標出願が2010年、2018年に発覚しており、海外での商標登録・保護活動にも力を入れています。また、タオル選びのアドバイザーである「タオルソムリエ」やタオル製造技能者の最高峰「タオルマイスター」も商標登録を行っており、総合的に商標管理できる体制を敷いています。今治タオル工業組合(愛媛県) 今治タオル工業組合は、組合員約100社に対してタオル製造業に関する指導・教育・情報又は資料の収集及び提供・調査研究、組合員のために行う組合ブランド推進事業、共同購買事業、共同金融事業等を行っている組合である。知財活用企業(商標)独自の品質基準は「5秒ルール」など12項目に及ぶタオル選びのアドバイザー「タオルソムリエ」

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