特許行政年次報告書 2019年版
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特許庁における取組第2部特許行政年次報告書2019年版221第9章企業担当者による知財活動の紹介 当初、大学発のベンチャー企業ということもあってか大学の論文発表等で既に技術等が公知となってしまっていることもあり、基本特許取得は困難に思われたのですが、事業化の検討を進める中で自社の工夫でもって事業に不可欠なものが何かできていると考え、この考えを頼りに権利化の検討を具体的に進め、いまや事業に欠かせない基本特許を中心に国内外で計100件近くの特許を得るに至っています。 また、内製化につきましては、はじめは手作業で色々と大変ですが、実務ができる人が一人でもいれば、それほど難しいものではありません。内製化は、実験データ等を研究者等に頼みやすくなったりする一方で、特許に関しては逆に色々と頼まれやすくなったりしますが、特許に関する考えや認識の違い等が共有できたり、ノウハウ等もたまってきたりしますので、コスト削減だけでなく、業務効率や特許出願の質向上等にもメリットがあるように思います。 また、今後につきましては、新たな挑戦として、標準化等も見据えて、技術(研究開発)と事業とを結びつけてどの時点で何ができるのかを確認しながら、アジャイルに知財活動を進めていきたいと考えています。受賞のポイント■京都大学発のベンチャー企業であり、世界を一変させる日本発の画期的半導体として注目され、低コスト・小型化・高性能を実現し得る酸化ガリウム系パワーデバイスと、ミストドライ法(ミストCVD成膜法)による成膜ソリューションは、大手企業向けのビジネス展開となることから、事業プランと連携した綿密な知財戦略を構築している。■知的財産部長に加え、弁理士試験合格者、米国出願経験豊富な実務経験者の3名体制で、知財戦略の設計から出願・登録に至るまでの全ての業務を内製化して、国内特許事務所を活用せずに実施している。また、自社技術に精通した者が明細書を作成するため、良質な出願書類を効率的に作成できている。基本特許を含め積極的に権利化しており、株式公開前に国内外の特許登録件数を100件以上にする予定である。■パテントマップを作成して事業戦略の検討に利用している。俯瞰図を作成し、他のベンチャー企業や海外企業の動向を注視しつつ対応するとともに、特許情報を分析し、技術的な相乗効果を生むパートナー候補企業を抽出し、異分野連携に活用している。また、海外市場も視野に入れており、欧州、米国、中国、韓国、台湾等への海外出願をも行った上で、営業活動を実施しており、国内外から、サンプル提供の依頼、出資や事業提携の話などが寄せられている。株式会社FLOSFIA(京都府) 株式会社FLOSFIAは、酸化ガリウムパワーデバイスの開発・製造、独自技術ミストドライによる薄膜の製造を行っている企業である。知財活用ベンチャーミストドライ法GaOデバイス③化学反応により⾼品質膜が堆積①ミスト状態で原材料を投⼊②加熱によりミストが少しずつ気化ミスト原材料⾼配向膜が可能

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