国際的な動向と特許庁の取組第3部第1章特許行政年次報告書2019年版245(1)我が国との関係 特許の分野では、日本国特許庁(JPO)とUSPTOは、特許審査ハイウェイ、国際審査官協議等を通して緊密な協力関係を築いてきた。また、JPOとUSPTOは、(i)米国が受理したPCT国際出願について、出願人の選択により国際調査・国際予備審査を我が国が実施する取組、(ⅱ)日米協働調査試行プログラム1を実施している。さらに、日米欧三極長官会合、日米欧中韓五庁長官会合といった多国間の枠組みにおいても、制度調和を始めとする種々の分野において連携を取っている。 意匠の分野では、JPOとUSPTOは、共に実体審査国として、日米欧中韓の意匠五庁(ID5)会合や意匠分類専門家会合等を通じて、両庁の審査実務や意匠分類等に関する理解を深め、緊密な協力関係を築いている。より詳細については、第3部第2章1.(6)を参照されたい。 商標の分野では、2001年から推進してきた日米欧の三極協力を発展させ、2011年から日米欧中韓の商標五庁(TM5)の枠組みによる協力を実施している。2.米国における動向(2)近年の知的財産政策の動向①中国の不公正貿易に対する行政措置の発表 2018年3月、トランプ大統領は、中国の不公正貿易に対処するための行政措置を発表した2。米国通商代表(USTR)は2017年8月から、中国の技術移転、知的財産、イノベーションに関する法律・政策・慣行について通商法301条に基づく調査を実施していたところであるが、その調査結果を踏まえ発表されたものである。 USTRはプレスリリース3において、中国の知的財産窃盗問題等に関する通商法301条に基づく調査の結果、以下のような結論を出したとしている4。 中国は、米国企業から中国企業への技術移転を進めるために、(ⅰ)株式制限を含む所有制限(foreign ownership restrictions)策を講じており、(ⅱ)米国企業の投資活動や事業活動に対し、技術ライセンスに関する制限を含む実質的な制限を課し、(ⅲ)米国企業に対する組織的投資・買収を指示・促進し、中国企業に最先端技術と知的財産を取得させ、(ⅳ)米国企業のコンピューターネットワークへの不正侵入を通じた窃盗を実施・援助しており、これらによって、米国の投資価値と技術価値、米国企業のグローバル競争力が損なわれている。 米国のトランプ政権は、中国が、知的財産・イノベーション・技術に関する法律・政策等を通じて、中国の企業に米国の技術や知的財産を移転することを促進・要求しており、米国の経済利益に悪影響を与えていると主張し、中国製品に対する関税引き上げを実施してきた。今後もトランプ政権による中国に対する措置が注目されている。 また、米国特許商標庁(USPTO)では2018年2月に就任したイアンク長官が、特許適格性の判断基準の明確化や特許審判部(PTAB: Patent Trial and Appeal Board)における運用の改善など、米国特許制度の改善に積極的に取り組んできた。 本節では、我が国との関係に加え、米国における知的財産政策の動向及びUSPTOの各種取組について紹介する。1 https://www.jpo.go.jp/system/patent/shinsa/general/nichibei.html2 https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/presidential-memorandum-actionsunited-states-related-section-301-investigation/3 https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/presidential-memorandum-actionsunited-states-related-section-301-investigation/4 https://ustr.gov/sites/default/files/Section%20301%20FINAL.PDF1234
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