特許行政年次報告書2019年版246第1章国際的な知的財産制度の動向 本調査結果を踏まえ、トランプ大統領は、(Ⅰ)USTRに対し、2018年3月22日の発表から15日以内に、製品リスト案と関税引き上げ案を発表するよう指示し、(Ⅱ)USTRに対し、中国の差別的な技術ライセンス慣行に対処するために、WTOにおける紛争解決手続を求めるよう指示し、(Ⅲ)財務長官に対し、米国にとって重要な産業・技術に対する中国による投資に関する問題に対処するよう指示した。(Ⅰ)に関し、USTRは、4月3日に、製品リスト案と関税引き上げ案を公表し、パブリックコメントを募集した後、7月6日から340億ドル相当の中国製品818品目への関税引き上げを開始した。②スペシャル301条1報告書 USTRは、2018年4月に「2018年スペシャル301条報告書」(以下レポート)を公表した2。 レポートは1974年米国通商法182条に基づき、知的財産権保護が不十分な国や公正かつ公平な市場アクセスを認めない国を特定するもので、警戒レベルには高い順に「優先国」、「優先監視国」、「監視国」の3段階があり、「優先国」に特定されると調査及び相手国との協議が開始され、協議不調の場合には対抗措置(制裁)への手続が進められる。 USTRは、12か国を「優先監視国」として特定し、これらの国における知的財産権問題は、来年中に二国間協議の対象とするとした。また、24か国を「監視国」として特定した[3-1-6図]。(3)USPTOの取組①特許適格性の判断基準の明確化 USPTOは、2019年1月、米国特許法第101条(特許適格性)の判断に関する審査ガイダンス2019年改訂版を公表した3。 同ガイダンスにより、(ⅰ)裁判所によって特許適格性が認められない法的例外とされた「抽象的アイディア」のカテゴリーについて、これまでの裁判例に基づいて、同カテゴリーを「数学的概念」、「人間の活動を体系化する方法」、「精神的プロセス」の3つに類型化し、その明確化が図られ、(ⅱ)クレーム発明が、特許適格性が認められない法的例外に向けられているか否かについての具体的な審査手法が公表された。 また、2019年3月、米国上院司法委員会知的財産小委員会のティリス委員長は、USPTOに関する公聴会「Oversight of the United States Patent and Trademark Office」にて、イアンク長官が特許法第101条改正法案の草案を夏までに公表する予定であると述べた。 今後も引き続き、特許適格性の問題へのUSPTOの取組に注目が集まっている。1 1974 年通商法301 条(貿易相手国の不公正な慣行に対して当該国との協議や制裁について定めた条項)の知的財産権に ついての特別版であるところから、スペシャル301 条と呼ばれる。2 https://ustr.gov/sites/default/files/files/Press/Reports/2018%20Special%20301.pdf3 https://s3.amazonaws.com/public-inspection.federalregister.gov/2018-28282.pdf233-1-6図 スペシャル301条レポート指定国(2018年)優先国優先監視国監視国306条監視国ー中国、インドネシア、インド、アルジェリア、クウェート、ロシア、ウクライナ、アルゼンチン、カナダ、チリ、コロンビア、ベネズエラ(12か国)タイ、ベトナム、パキスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、エジプト、レバノン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、ギリシャ、ルーマニア、スイス、トルコ、メキシコ、コスタリカ、ドミニカ共和国、グアテマラ、バルバトス、ジャマイカ、ボリビア、ブラジル、エクアドル、ペルー(24か国)中国
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