国際的な動向と特許庁の取組第3部第1章特許行政年次報告書2019年版247②PTABを巡る動向 2011年に成立した米国発明法(AIA)によって、USPTOが付与する特許の品質向上を目的として、特許付与後のレビューが導入されるとともに、レビューを所掌する組織としてPTABが設立された。 PTABが受理する請願には、当事者系レビュー(IPR: Inter Partes Review)、特許付与後レビュー(PGR: Post Grant Review)、ビジネス方法レビュー(CBMR: Covered Business Method Review)がある。 イアンク長官は、これらレビュー制度について、目を向けるべき改善ポイントとして、クレーム解釈の基準に関する問題、クレームの訂正手続の問題などが挙げられるとの見解を示しており1、これらの問題に精力的に取り組んできた。 USPTOは、2018年11月、レビュー手続におけるクレーム解釈の基準を、これまでのBRI基準(明細書に照らして最も広い合理的解釈)から、連邦地方裁判所や国際貿易委員会(ITC)がクレーム解釈を行う際に用いているPhillips基準2(「当業者が理解するクレームの通常的かつ慣用的な意味、及び審査経過」に基づいてクレームを解釈する基準)に変更することを公表した。 また、USPTOは、2018年10月、レビュー制度における特許クレーム訂正手続の改訂案を公表し3、意見募集を行った結果を踏まえて改訂案に修正を加えた上で、2018年3月に、クレーム訂正手続に関する試行プログラムを開始した4。これまで、特許レビューにおける現行の特許クレーム訂正手続では、特許権者がクレームの訂正を申立てられる機会は原則として一度だけであり、追加の特許クレーム訂正申立てが認められるのは、正当な理由がある場合(there is a good causeshowing)等に限られていた。一方、試行プログラムでは、特許権者がクレームの訂正申立てを行った後に、PTABによる予備的見解(preliminary guidance)を踏まえてクレームの再訂正を申立てることもできる。1 https://www.judiciary.senate.gov/imo/media/doc/Iancu%20Responses%20to%20QFRs.pdf2 Phillips v. AWH Corp事件CAFC大法廷判決で示された基準 (Phillips v. AWH Corp., 415 F.3d 1303 (Fed. Cir. 2005) (en banc))3 https://www.gpo.gov/fdsys/pkg/FR-2018-10-29/pdf/2018-23187.pdf4 https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2019-03-15/pdf/2019-04897.pdf134
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