国際的な動向と特許庁の取組第3部第1章特許行政年次報告書2019年版251(3)EPOの取組①概要 欧州の特許制度については、EPOが中核として大きな役割を担っている。EPOはEPCに基づき設立された機関であり、EPCの現在の締約国数は38か国になる。EPOにおいて審査され、特許査定された場合、指定した締約国において特許として効力が発生する。 また、EPCの締約国(38か国)・拡張協定国(2か国)以外でも、欧州特許の認証制度を導入する例があり、すでにモロッコ、モルドバ、チュニジア、カンボジアにおける欧州特許の認証に関する合意が発効している。そして、EPOは、15の特許庁との間で特許審査ハイウェイ(PPH)を実施している。その他、EPOは、審査の質、効率性、出願人の利便性の向上に向け、以下のような取組を強化している。②審査迅速化の取組について EPOは、審査迅速化により係属中の出願の法的安定性を向上させる「Early Certainty」というスキームを実施しており、全ての欧州出願について、出願日から6月以内に調査報告及び見解書を発行すること(2018年:4.4月)、2020年までに審査請求から特許査定までの期間を12月以内(2018年:22.3月)とすること、異議申し立ての審理結果が得られるまでの期間を15月以内(2018年:18.6月)とすることを挙げている。③戦略計画2023 EPOは、2019年1月、戦略計画2023(2019年から2023年のEPOの活動計画)に関するパブリック・コンサルテーションを行い、(ⅰ)特許制度の進化及び将来の課題、(ⅱ)高品質なサービスの提供、(ⅲ)社会的責任及び透明性の3つのトピックに関する意見を求めた。パブリック・コンサルテーションの結果を受けて作成される提案は、2019年6月に採択に向けて欧州特許機構管理理事会に提出される予定。④特許審査タイミングの自由度を向上させる施策の検討 EPOは、特許審査着手時期を延期することで審査タイミングの自由度を向上させる施策の導入に関するユーザー・コンサルテーションの結果概要を公表した。本調査の結果は、600件超の回答があり、特許審査タイミングの更なる自由度の必要性に関する質問への回答について、賛成と反対がほぼ半々の結果(賛成52%、反対46%、無回答2%)となった。(4)EUIPOの取組①概要 EUIPOは、欧州連合商標や共同体意匠の権利付与の役割を持っているとともに、「知的財産権の侵害に関する欧州監視部門(European Ob-servatory on Infringements of Intellectual Property Rights)」が委任されており、知的財産権の権利行使においても重要な役割を担っている。 JPOとEUIPOとは、1998年に商標分野において協力覚書を交わしていたが、EUIPOの組織改編を契機に、意匠分野を交えた新たな協力覚書を2018年8月に交わした。
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